ドロシー・マクゴヴァン
Polly Maggoo
「ベトナムから遠く離れて」のウィリアム・クラインが脚本・監督した売れっ子モデルの物語。撮影は「ベトナムから遠く離れて」でウィリアム・クラインの分担場面を担当したジャン・ボフティ、音楽はミシェル・ルグランが担当した。出演は「エル」誌のモデルで映画初出演のドロシー・マクゴヴァンのほかに、ジャン・ロシュフォール、サミー・フレー、フィリップ・ノワレなどが出演。
モードの都パリ。恒例のパリコレクションが発表された。その年の新モードは、宇宙時代にふさわしく、アルミニュームを素材にしたデザインが圧倒的人気をよび、デザイナーは、ペンチ片手にモデルの間を走りまわっていた。数多いモデルの間で、最も注目を集めたのはポリー・マグー(D・マクゴヴァン)である。そして、物質文明のイメージ・シンボルとして大々的に売り出されることになった。世界中の眼は、一躍ポリー・マグーの姿に集中する。これに目をつけたのがテレビ局。ドキュメント・シリーズ“お前は誰だ”を製作することになった。ポリー・マグーのすべてを描き出すことによって、その背後にある消費文明の核心をあばき出そうというのだ。一方、パリから遠く離れた東欧のある国。眉目秀麗な王子イゴール(S・フレー)は結婚適齢期をむかえたにもかかわらず、なみいる姫君候補たちに、いっこう興味を示さない。側近たちが困りはてている頃、イゴール王子は、テレビでポリー・マグーに目をとめた。この女性こそ、私の妻にふさわしい。王子はすぐさま白馬にまたがり、パリを目ざして出発した。王子にとって、これは本当の恋だった。だが、この恋もジャーナリストにかぎつけられて格好の素材となってしまった。“イゴール王子、ファッション・モデルと結婚の御意向か”と派手に書きたてられる始末。王子の唯一の恋も、現代のマスコミ攻勢にはかなわない……。
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