アーノルド・コルフ
Heinrich 17
ドイツ浪漫派の巨匠ウィルヘルム・マイエル・フェルスター氏の原作に成った舞台劇に基づき、ハンス・ベイレント氏が脚色及び監督をしたもの。主役には「ディセプション」「マリア・マグダレナ」等出演のパウル・ハルトマン氏、「カリガリ博士」「オセロ(1922)」等出演のヴェルナー・クラウス氏、「シャロレー伯爵」「蝙蝠」等出演のエファ・マイ嬢等が出演し、旧都ハイデルベルヒ及びカールスブルグを背景に撮影されたものである。劇の時代は世界大戦前の一九一三年である。無声。
ドイツ連邦の一公国ザクセンのカールスブルグの宮殿には皇子のカール・ハインリッヒが父太公の寵愛を受けて暮らして居たが、儀式一点張りの宮殿の生活は、沈滞と因襲に満ちてまるで、美しい牢獄のような感じがあった。ハインリッヒはハイデルベルヒ大学に入学してギムナーデの卒業試験を受ける事と成り、教育掛りのユットナー博士とともにハイデルベルヒへ来た。其処は呑気愉快な学生の都であった。皇子はルューデルと云う楽しい学生の集合所に成って居る家へ寄宿する事と成ったが、その家の娘ケティーの純な優しい姿は、若い皇子の心を捕らえずには置かなかった。やがて二人は美しい愛の言葉を囁き交わす仲となったが、その喜びも束の間、老体のユットナー博士は病気と成り、その上ならずカール・ハインリッヒの父君の崩御の悲報がもたらされて、皇子は直ちにカールスブルグへ帰らねばならなかった。皇子は悲しい別れをケティーに告げ、死んだユットナー博士を葬って思い出多いハイデルベルヒの町を去った。二年の後今は王位に即いて居るカール・ハインリッヒは隣国の王女との結婚を国務大臣から願われた、彼はその結婚をする前に微行で再び思い出深いハイデルベルヒを訪れた。ケティーはいまだに毎日ユットナー博士の墓に詣でて居たが、二人が再会した時には湧然と昔の想い出が甦った。けれども二人は永遠に別れねば成らなかった。町の学生達は炬火行列をして息子を祝福した。その行列をバルコニーから会釈しながら見送って居るカール・ハインリッヒの胸は悲しく閉ざされて居た。かくて太公は全く青春と愛と幸福の世界に別れを告げたのであった。懐かしいハイデルベルヒの古城跡は淋しく闇に包まれて行く。
Heinrich 17
Karl Heinrich
Dr. Juttner
Derleff
Karl Bilz
Kaeti
Frau Dorffel
Frau Ruder
Hofmarschall Von Falkenberg
Lutz
Von Haugk
Kurt Engerbrecht
[c]キネマ旬報社