グスタフ・ディースル
Thomas Beck
「心の不思議」「懐かしの巴里」「パンドラの箱」をものしたG・W・パブスト氏の監督作品でフランツ・シュルツ氏の原作をアドルフ・ランツ氏とラディスラオ・バホダ氏とが共同で脚色の任に当った。主演者は「生ける屍」「パンドラの箱」のグスタフ・ディースル氏、「メトロポリス」「金」のブリギッテ・ヘルム嬢で、ヘルタ・フォン・ヴァルター嬢、ジャック・トレヴァー氏、ニコ・テュロフ氏等が助演している。(無声)
職務に勤勉で、厳格な性質の弁護士トーマス・ベックの妻イレーネは物質的には何不足もなかったが、嬌慢で奔放な性質の彼女は束縛のない自由な生活を憧れていた。そして彼女の家をしばしば訪問する画家ワルター・フランクに彼女の理想に近い男性を見出したようにイレーネは思った。ある日彼女の友人でトーマスが酷く嫌っているリアナが彼女をダンスホールへ誘った時、トーマスはイレーネに行くことを許さなかった。憤慨した彼女は家を飛び出してフランクを其のアトリエに訪ねてトーマスが少しも彼女を構ってくれないと訴えた。そして二人はウィーンへ逃げようと約束した。トーマスは其の事を知りフランクにイレーネへの絶交状を書かせ、停車場でフランクが来るのを待ちわびているイレーネに其の絶交状を見せて家へ帰れと言った。激した彼女はダンスホールに走ったが、そこの放逸な空気は想像していた程快いものではなかった。彼女は我が家へ帰って来た。トーマスは別にとがめもせず黙々としたいた。翌日イレーネは夫が嫌っている友達を招いて満たされぬ心を何がなし昂奮させようとしていた。しかしトーマスが帰宅すると来客達は慌てて辞去した。その主の一人拳闘家のサムはイレーネに想いを寄せ彼女もサムの力強い筋肉美に心を惹かれた。彼女がサムと共にフランクのアトリエを訪ねた時サムはフランクの不在を奇貨としてイレーネに暴行を加えようとしたが帰宅した画家のために彼女は救われた。そこへトーマスがやって来た。かくて離婚裁判が開かれたが証人として召喚されたフランクは供述を拒んだ。イレーネは夫の膝に倒れ伏した。離婚は宣告された。トーマスは彼女の身の所置に就いて親切に語った。二人は再び相見ることもあろうし、或いは再婚する日が来るような気がしたのである。
Thomas Beck
Irene
Liana
Walter Frank
Moller
Sam Taylor
Anita Haldern
Andre
Robert
Gina
Daisy
監督
原作
撮影
セット
セット
脚色
脚色
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