ライオネル・バリモア
Richard_Grant
「マタ・ハリ」「自由の魂」のライオネル・バリモアが主演する映画で、劇作家ベイヤード・ヴェイラーが特に書き卸した物語を氏自ら映画脚色して台詞をつけ、「類猿人ターザン(1932)」「キューバの恋唄」のW・S・ヴァン・ダイクが監督に当たった。助演者は「若き血に燃ゆる頃」「印度の寵児」のマッジ・エヴァンス、「極楽特急」「宝石泥棒」のケイ・フランシス、「令女学」のアラン・モーブレイ、「進め女性軍」のウィリアム・ベイクウェル及びボリイ・モラン、「類猿人ターザン(1932)」のC・オーブリー・スミス及びフォーレスター・ハーヴェイ等で撮影は「怪物団」「青空狂騒曲」のメリット・B・ガースタッドの担当である。
リチャード・グラントは検事としては多くの罪人を死刑椅子に送り、また弁護士としては反対に幾多の人々をその運命から救い、最も敏腕な法律家として当代に鳴っている男である。彼はいつも人は合理的の殺人を行って罪を逃れることができるという説を持していた。ある日グラントは、あまり品性の良くないので評判の富豪ゴードン・リッチからある用件で招かれたことがあった。ところがその用件というのが、リッチがある純真な処女と結婚するために妾のマージョリイ・ウェストと手を切り度いので遺言を書き換える、ということだった。グラントはリッチの卑劣な行為をいたく憎まずには居られなかった。だがリッチが結婚するという処女が自分の娘バーバーラであると知るに及んでグラントのリッチに対する憎しみは驚きと怒りに変わった。グラントは娘にこの結婚は断るがいいと論したがバーバラは乙女心の一筋にリッチとの結婚を固く決心していて父の忠告を容れようとはしない。やむなくグラントはリッチに若しバーバラと結婚するなら、その前に彼の命をもらうと宣告した。そうしたグラントの警告にも拘らず結婚の準備は着々として進められ、いよいよ結婚式の晩となった。式場にはグラントも出席して新婚夫婦のために、表向きは父親として乾杯した。リッチは披露宴が果ててから万一自分が殺されたら、その下手人はグラントであるという告訴状を警察宛に書き、なおその上グラントが自分の部屋を行ったり来たり歩いているのを窓掛けに映る影で認めた。ところが不思議なことに、それと同時にグラントはリッチの書斎に忍び込んで彼を殺し、ピストルをリッチの手に持たせて自殺を装いさせ、かの警察宛の告訴状を奪い去って了った。リッチ殺人事件は期せずしてグラントの手に委ねられた。グラントを疑ったものはリッチの妾マージョリー・ウェストだけで、彼女はついに彼が犯人であることを発見した。だが彼女は若し口を開けば彼女自身を犯人にしてしまうぞとグラントから脅かされたので口を閉ざしていた。かくてグラントは、彼の持論通りに合理的の殺人を犯して罪を免れ得たと自信していたがそれは過誤だった。不思議な運命の手によって、彼が殺した男にグラントは殺されて了ったのである。
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