グスタフ・フレーリッヒ
Hans Ritter
「最後の中隊」と同じくヨーエ・マイ氏指揮の下に製作された映画で、「嘆きの天使」「死の花嫁」のロベルト・リープマン氏とカール・ハートル氏が、フェリックス・ドエルマン、エドモンド・アイスラー両氏合作のオペレッタを基に脚本を作り、「二重結婚」と同じくグスタフ・ウツィツキ氏が監督に当り「ニーナ・ペトロヴナ」「ハンガリア狂想曲」のカール・ホフマン氏が撮影した。主役は「帰郷(1928)」「最後の唄」のグスタフ・フレーリッヒ氏で、「恋のネルスン」「エキスプロージョン」のリアネ・ハイト嬢、「ヴォルガ」「テレーズ・ラカン」のハンス・アダルベルト・フォン・シュレットゥ氏、及びカール・ゲルハルト氏が助演している。(発声版/無声版)
アルプス山麓チロルの一寒村。村の小学校の若い音楽教師ハンスの情熱は二つのものに捧げられていた。一つは村の郵便局長の娘アンネルの上に、もう一つは今彼の作曲している「アルプスの夕映え」というオペラの上に。貧しい彼は、愛する乙女に寄せた想いを唄った其の曲を、音楽の都ウィーンに持って行って、そこで結婚の費用を得たいと望んでいた。けれどアンネルの父は貧しい教師風情に大切な娘をやりたくないと思っている。父親の眼鏡に叶ったのは、乱暴で景気のいい牛飼いの若者レヒナーだった。ウィーンへ行ったハンスから、村で便りを待つアンネルの許に送られた手紙はみな郵便局長である父の手で処理されてしまう。四ヶ月経っても便りのない時は成功しなかったものと諦めて呉れと云われている彼女は、いやいや父のすすめにに従ってレヒナーの妻になることを承諾してしまった。その婚礼の夜、何も知らないハンスが恋人待つ村へ帰って来た。「アルプスの夕映え」が上演されることになったので、一日も早く恋人の喜ぶ顔がみたかったのだ。しかし村で彼を待ちうけていたものは失恋の苦味だけだった。打ちのめされたハンスは、またウィーンへ戻った。自作オペラの初日だが、今は失われた恋人への思慕の曲は耐えられない。舞台へ駆け上った彼は、その上演を中止させようとした。が世間は彼を狂える天才としていたましく思っただけである。やがて名曲「アルプスの夕映え」が何回かの上演記録を作っている頃、狂える天才作曲家の死が伝えられた。村の名を世に出して呉れた天才作曲家ハンス・リッターを記念すべく、彼の村に建てられた銅像。その除幕式の日に、村を漂泊する放浪者があった。これが誤って死を伝えられた天才作曲家の変り果てた姿とは誰も知らなかった。唯ひとり夫に先立たれて、今では若後家となったアンネルだけが昔の恋人の面影をこの放浪者の中に見出した。そして彼女は永遠の放浪者として、ハンスと共に村を去って行くのである。
監督
脚本
脚本
原作戯曲
原作戯曲
製作
撮影
音楽
音響
セット
セット
[c]キネマ旬報社