ラインホルト・ベルント
Jim
「ムーラン・ルージュ」「ピカデリィ」のE・A・デュポンがBIP社を辞し再びドイツに帰って監督にあたった作で、原作はアルフレッド・マッカードの筆になる小説、それをルドルフ・カッチャーとエゴン・アイスが協力して脚本に組立てた。主なる出演者は「メスメンド」「白鷲」「黄金の鑑札」で知られたソビエト女優のアンナ・ステンを始め「嘆きの天使」クルト・ゲロン、新進のアドルフ・ヴォールブルック、ラインホルト・ベルント、オット・ヴァルプルグなどでフリーデル・ベーン・グルント、アコス・ファルカスの二人がカメラを担当している。
ベルリン。国際的の大サーカス「セントラル」。ジムとロビーはここに働らく若者である。二人は親友だった。そこへ新らしくロシアから若い女マリーナが入って来る。二人は張り合うが両方とも望みを遂げない。ところが不景気の結果、何か新しい曲芸で客を呼ばねばならず、親方は「サルト・モルターレ」(イタリア語で死の飛躍という意、曲芸の名前で一種の外国語)なる新芸を案出したが、あまり危険なので誰も演ろうとしない。結局ジムと新入りのマリーナとが演ずることになる。曲芸は大受けであった。然し或る日、遂々ジムは墜落し足を挫ってしまう。足が不自由になったジムにマリーナは変な意地から同情し、つい結婚せねばならない破目になる。そしてジムはもう曲芸師としては見込みがないので、こんどはロビーが代ってマリーナの相手をせねばならなくなる。然しロビーは承知しない。彼は恐がっているのではない。彼はマリーナに近づくのを恐れたのである。親友の妻に彼は恋しているのだった。けれどもジムの願いで彼は遂にマリーナと共演することになる。彼の恐れは急速に実現し、二人は抜さしならぬ破目となる。親友の女房と--、彼は苦しむ、或る日ロビーはマリーナと会っている時、ジムが通りかかったので、彼等はてっきり感ずかれたと思い、ロビーは二人の間を白状し、この苦しみを断ってくれとジムに頼むが、ジムは何にも知らなかったのだった。裏切られた片輪者のジムが必ず復讐することを想って恐れ戦きながらマリーナとジムは最後の曲芸にうつる。曲芸がクライマックスに達した時スイッチを切り彼等を空中に飛躍させるのがジムの役目なので、彼が一寸手を違えさえすれば訳なく二人を殺すことが出来るのだ。曲芸はクライマックスに達した。瞬間、心労に疲れ切ったマリーナは飛び損ねて僅かに天井から下がっている旗にすがりつく。だが漸く彼女はロビーのために救われて無事に降り立つことが出来た。翌日ジムは支配人の前に立った。そして何か獅子の番人にでもなりたいと申し出た。彼は愛する二人の間に立って邪魔したくなかったのである。マリーナとロビーはサーカスを見捨てて広い世界に出た。然し果して幸福であったかどうかは判らなかった。
監督
脚本
脚本
原作
製作
撮影
撮影
音楽
セット
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