フリッツ・コルトナー
Demitri Karamazoff
ロシアの文豪ドストイエフスキーの小説『カラマゾフの兄弟』の一部分を基にして「帰郷」の原作者レオンハルト・フランクが脚本を組立て「生ける屍」のフョードル・オツェプが監督し「泣き笑ひの人生」のフリーデル・ベーン・グルントが撮影したもので出演俳優は「死の花嫁」「パンドラの箱」のフリッツ・コルトナー、「泣き笑ひの人生」「黄色の鑑札」「メスメンド」のアンナ・ステン、「月世界の女」「淪落の女の日記」のフリッツ・ラスプ、「最後の歌」のハンナ・ヴァーグ、マックス・ポール、ベンハルト・ミネッティ等の面々である。
許嫁のカーチャと結婚するために必要な三千留を調えようとデミトリは彼女をモスコーの駅に残して故郷に帰ったが父に逢えなかった。弟のイワンにきくと年甲斐もなくグルシェンカという淫売女に夢中になっていると皮肉な微笑を洩らしている。俺が女に逢って手を切らせてやろうとデミトリは家を飛び出した。グルシェンカはなかなか逢おうとはしない。夜半まで待って漸く逢えたが淫蕩な父の血を亨けついだ彼は忽ちグルシェンカの誘惑の虜となってしまう。デミトリはもう何もかも忘れて了った。軍務も、名誉も、許嫁のカーチャのことも。そして彼は父親に嫉妬した。カーチャがはるばる都から調達して来た三千留を手にすると一たんは家を出ようとするもののグルシェンカのことを考えるとその決心も鈍って了うのだった。『グルシェンカ様は今夜十時にお父様の所においでになります。お父様は三千留の金を枕の下にお入れになって待っていらっしゃいます。窓を叩く合図も、もう出来て居ります』癲癇もちスメルジャコフの話を聞いて言いようのない焦慮さえ感じるのだった。その夜の十時すぎ只ならぬ叫び声がカラマゾフ家に起こった。そして暗をついて庭にとび出して来たのはデミトリであった。彼は手頃な石を持っている。彼の後を追ったのは老僕のグレゴリであった。追いすがったグレゴリを石で打ってその返り血を浴びたままデミトリはグルシェンカの家に走った。グルシェンカは留守であった。下女の告げるままにモリローエにあるジプシーの宿に行ってみればそこにグルシェンカはいた。二人がそこで酒宴を開いている最中彼は憲兵隊の手で捕えられた。併し彼は憲兵の口から意外な言葉を聞いた。自分は父親殺しの嫌疑をうけているとのことである。法廷でも、彼はそれに就いて争いつづけた。しかしすべての証言は彼に不利だった。今や父親殺しの判決が下されんとした時、法廷に飛び込んで来たのは弟のイワンだった。真犯人は下男のスメルジャコフであること、盗まれた三千留は彼の財布から出てきたこと、スメルジャコフは自分が此処まで連れて来たことを彼は懸命に主張した。だがスルメジャコフを連れて行った看守人は彼が法廷の廊下で縊死している事を報告した。証拠不十分の判決をうけてデミトリは十年のシベリア流刑を宣告された。囚人達は汽車に積まれて送られてゆく。『十年のシベリアだ。グルシェンカ、お前はどうする』グルシェンカは無邪気に笑った『ねえミーチャ、シベリアにだって人間は住めるのよ』そして最後の車にとび乗ったグルシェンの顔を煙が白く吹き払った。
Demitri Karamazoff
Gruschenka
Smerdjakoff
The Old Karamazoff
Katja
Iwan Karamazoff
監督
脚本
原作
撮影
音楽
製作進行
セット
[c]キネマ旬報社