バスター・キートン
Buster Garnier
「キートンの歌劇王」「麦酒王」のバスター・キートンがフランスのネロ・フィルムで主演した喜劇で「泣き笑い千法札」のイヴ・ミランドが書卸し、アルノルド・リップが脚色しドイツに在ったマックス・ノセックが監督に当りR・ルフェーブルが撮影したもの。助演は「家なき児(1935)」のマドレーヌ・ギティ、「世界の終り」のコレット・ダルフィーユ、新進ポーレット・デュボー、ガストン・デュプレー等である。
舞台俳優になることが理想のバスター・ガルニエが辛うじてありついた職業は或る自動車会社のビラ撒きだった。彼は新装車にふんぞり返って千法紙幣を真似た宣伝ビラを撒いて行った。ところがふとした間違いから五千枚の本物の千法紙幣がビラの中に混入しているのを露知らぬバスターは威勢よく街上にバラ撒いてしまった。丁度通りかかったジェルメイヌという娘は金銭上の過失から解雇されていたがこの偉大な慈善によって救われた。しかしバスターはこの過失によって首になり「公園劇場」のプロンプターをしている母親のもとを訪れた。彼はここの楽屋でも奇想天外の失策を続出し、遂に玄関から放り出されてしまった。絶望したバスターが自殺しようと決意した時現われたのはかつてのジェルメイヌだった。彼女はバスターを千万長者だとばかり思い込んでいたが、彼の告白を聴いてかえって二人の間の障害が無くなったのを喜んだ。家へ帰ると母親から役が振られたことを聞かされた。彼は脱獄する盗賊に扮するのである。彼はジェルメイヌの言葉に従い、その頃投獄された有名なギャングの親分「切痕のジム」の扮装をする事にした。バスターがデビュする「シャンゼリゼェの王様」の初日の夜、ジムの子分達は親分を投獄させその劇場の近くで落合うことになっていた。その夜ジムの扮装をしたバスターが劇場の庭でジェルメイヌと会っているところを子分に見付かりジムと間違えられて連れてゆかれ、その後に真物のジムが到着した。それからは珍妙な間違いと追跡と格闘との目まぐるしい連続である。辛うじてギャングの手から逃れたバスターは最後の幕に遅れじと劇場へ駈けつける。ギャングがその跡を追う、警官が又彼等を追跡する。遂に拳銃の火が飛び交う追跡戦はバスターの跡を追って舞台にまで移動した。退屈な芝居は急に活気づいて観客は大喝采である。かくてギャングは舞台の上で首尾よく警官の手に捕縛され、一夜計らずも英雄になったバスターの胸にジェルメイヌが抱かれた。そこでバスターは生れて初めて笑ったのである。
Buster Garnier
Madame Gaunier
Germaine
Simone
Le Regisseur
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