ジャック・カトラン
Gosta
「嘆きのピエロ」に先んじてマルセル・レルビエ氏指揮の下に製作されたジャック・カトラン氏第一回監督主演映画で台本もカトラン氏が執筆したものである。カトラン氏は虐げられた若者とイギリス富豪青年の二役を演じ相手役は「生けるパスカル(1925)」「エル・ドラドオ」等出演のマルセル・プラドー嬢で、「嘆きのピエロ」「エル・ドラドオ」と同じくフィリップ・エリア氏とクレール・プレリア夫人が共演するほかウルリカ・ニストレエム夫人、エディット・レアル夫人等も出演している。因みにセットはクロード・オータン・ララ氏のデザインに依って設計されたものである。無声。
海沿いの砂丘のかげに在る見るもいぶせき破れ屋に漁夫の一家が住んでいた。主人は大酒飲みの怠け者で虐げられた妻は忍苦の生活を送らねばならなかった。彼等の息子のゲスタは小児のような単純な心を持った若者で面白いカラクリの箱を持ち歩いて路傍の人々を笑わせては僅かばかりのお鳥目を貰って家計の手助けをしていた。或夜ゲスタの父は妻が虎の子の五フランを奪い取って港の町に酒飲みに出かけた。五フランを持って行かれては明日が日にも困るので夫を追駆ける途中彼女はドルモワ家の令嬢マリー・アンジュが乗った自動車に轢かれた。折柄母を気遣って来たゲスタは美しいマリー・アンジュに見惚れた。以来ゲスタ母子は令嬢の親切を感謝の涙と共に受けた。令嬢にはイギリス青年ドナルドという婚約者があった。或日彼は訪れて高価な金剛石の首飾りを令嬢に贈った。偶然それを知ったゲスタの父は夜になると妻が止めるのを振り切って出掛け、ドルモワ邸に忍び入り首飾りを盗み出した。ゲスタは驚いて父の跡を追った。ゲスタは父と争い首飾りを取り戻そうと試みると飲酒家の父は激怒して心臓破裂を起こして死んだ。ゲスタは首飾りを令嬢に返却し一時窃盗と殺人の容疑者として取調べられたが真相が判明して放免された。ゲスタはドナルドと楽しい恋を語るマリー・アンジュに別れを告げ母と共に何処かに去ってしまった。
Gosta
Marie Ange D'ormoy
Gosta's Father
Gosta's Mother
Countess D'ormoy
Cook
Governess
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