グスタフ・ヴァルダウ
Theodor Monti
「モナ・リザの失踪」を作ったゲザ・フォン・ボルヴァリーが同映画に次いで作った映画で、前作品と同じく撮影にはウィリー・ゴールドベルガーを、作曲にはロベルト・シュトルツの協力を得ている。映画の原作はA・ボニーの戯曲であるが、それをハンス・H・ツェルレットが映画用にシナリオ化にした。主演者は「偽国旗の下に」「予審」のグスタフ・フレーリッヒと、舞台の女優でかつて「ニュルンベルクの親方」にも出演した事のあるマリア・ソルヴェクとの二人である。なお、以上の二人を助けてパウル・ケンプ、アリ・ギトー、グスタフ・ヴァルダウ、等も出演している。
青年銀行員パウル・リッター君は親友の筆蹟鑑定家ローカス・スペルリングと一緒にある空別荘を無断借用していたが、ある日彼は四年ぶりでロンドンから帰って来るという娘を出迎えに行った頭取のサインを戴きに、伺候する途中、素晴しい娘に出会ったものである。令嬢もどうやら彼に心を惹かれたらしく、遂に一緒に頭取の邸まで来てしまった。そこで、パウルも何となく見栄をはって、自分はこの頭取モンテイと親友であると吹聴してしまった。すると娘は自分は失業中なので頭取に紹介してくれと執拗にせがまれるので、仕方なしにその場はどうやらごま化し、翌日、自分の邸へ彼女を招待することになった。勿論、邸と云っても室内には道具一つないので、庭園でお茶の卓に向っている、と意地の悪い夕立で、偽重役の化の皮をはがれてしまう。その代り、パウルの気心も相手に知れて、一層の仲好しになったが、さてその翌日、パウルが銀行へ出勤してみると、パウルと同じ課に、その娘がタイピストとして納まっていたのである。それから、二人の仲は一層に濃やかになり、日曜日には、友人のスペルリングや、同じタイピストのケラー嬢と四人一緒で郊外に楽しい行楽に出かけたりする。けれど、パウルにとって、娘の態度から解せなかったのは、頭取と彼女との間に、何か妙な関係がありそうだった。それに、娘の下宿の女将の言葉などから、てっきり彼女を社長の情婦ときめて、すっかり腐り切ってしまう。その中に、彼女は課長の御機嫌を損ねて首になる。土曜日にモンテイ頭取の令嬢帰朝歓迎会が催された。頭取に反感を持つ様になったパウルは、その招待状をずたずたにさいてしまう。一方、頭取邸では、しづしづと階段を降りて来る令嬢の姿を見ると、行員達の驚いたことには、それが例の課長に馘首されたタイピストであり、パウルにとって忘れられぬ彼女だったのである。その夜、しょんぼりと寂しい邸へ帰ったパウル君に素晴しい好運が舞い込んだのは云うまでもない。
Theodor Monti
Carla
Paul Ritter
Rochus
Fraulein Keller
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Fraulein Kleinschmidt
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