レックス・ハリソン
Vivian Kenway
「青の恐怖」「ウォタルー街」のシドニー・ギリアットが監督した一九四四年作品で、「ウォタルー街」のヴァル・ヴァレンタインが書卸し、監督ギリアットと共同製作者フランク・ローンダーが協同脚色し、「青の恐怖」と同じくウィルキー・クーパーが撮影を指揮し、同じくウィリアム・オルウィンが音楽を作曲した。主演は「大空に散る恋」「アンナとシャム王」のレックス・ハリソンで「間諜最後の日」のリリー・パルマー、「妖婦」のグリフィス・ジョーンズ、映画初出演の新人マーガレット・ジョンストン、舞台の老優ゴッドフリー・タール、「キャラバン」のジーン・ケント、「間諜最後の日」のガイ・ミドルトン等が共演している。
ヴィヴィアン・ケンウェイは無責任なエゴイストである。オックスフォード大学時代、同窓のサンディ・ダンカンが好意を持っている女学生ジルを、甘い言葉で誘惑し、礼拝堂のせん塔にナベをかぶせる悪戯をして退学されると、ジルには一言のあいさつもなく南米へ赴いたのである。コーヒー栽培も失敗してロンドンに舞いもどると、父の女秘書ジェニファーに大いに心ひかれたが、ひじ鉄砲を食い通しで歯が立たぬ。偶然会ったダンカンがジルと結婚しようとしているのを知りながら、ジルをさそい出して一夜を明かす。ダンカンと大ケンカをしてロンドン中の鼻つまみとなった彼は、大陸の都を経回ってドンファンぶりを発揮し、ウィーンに着くと無一文となる。金策がつかずホテルを夜逃げしようとしたとたん、リッキ・クラウスナーという婦人が救い主となって現われる。彼女はオックスフォード時代にヴィヴィアンにあこがれていたユダヤ人の娘で、ヒットラーがオーストリーを併どんしたので、ユダヤ人狩りに会うのを逃れるため、形式的に結婚してくれれば、交換条件として彼の財政を救おうと申し出たのである。そのような勘定高い女性には何の興味も感じなかったが、彼はリッキと結婚する。英国へ帰ると、父はコーンウォールの別荘へ行っていたので、彼は花嫁を父に紹介するために赴く。そこにはジェニファーも来ていて、彼は今更のように彼女の美しさに心を奪われる。ヴィヴィアンの非行を一から十まで知っているジェニファーであるが、それにもかかわらず彼女はこのドンファンを心から愛していたのである。彼の求愛に、リッキに悪いと思いつつ、心弱くもくちびるを許す。それを見たリッキは一人、沖へ向って泳いで行く。父によばれて危くヴィヴィアンはリッキを救ったが、彼はこの悲劇に直面しつつも、ジェニファーをあきらめ切れない。別荘にジェニファーを残し、父と妻と三人でロンドンに帰る途中、朝からやけ酒を飲んだ彼は自動車の運転をあやまって惨事をひき起し、父は即死し、リッキは重傷を負ったのである。さすがのヴィヴィアンにもこれはあまりに大きい打撃で、折から起った第二次大戦にヴィヴィアンは陸軍中尉として、フランス戦線へ赴いたのである。彼は戦車斥候として最前方に活動し、とある橋にさしかかった時、地雷が仕かけてありはせぬか、しらべるために敢然戦車を走らせて橋を渡る。はたして地雷は爆発し、彼は命をすてたが橋には損害はなかった。後続の戦車部隊はヴィヴィアン・ケンウェイの犠牲により前進することが出来たのである。
Vivian Kenway
Rikki Krausner
Kenway
Sandy Duncan
Jennifer Calthrop
Forgroy
Jill
Aunt
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