レイモン・ルーロー
Phillippe Clarence
「アントワンとアントワーヌ」で名をあげた新人ジャック・ベッケルが監督した映画で、彼自らモーリス・オーベルジュおよびモーリス・グリッフと協力して脚本を書きおろし、オーベルジュが台詞を書いた。撮影はニコラ・エイエ、装置はマックス・ドゥーイ・音楽はジャン・ジャック・グリュネンワルドである。主演は「みどりの園」のレイモン・ルーローと新人ミシュリーヌ・プレールで、「六人の最後の者」のジャン・シュヴリエ「旅路の果て」のガブリエル・ドルジア、ジャンヌ・フュジェ・ジル、フランソワーズ・リュガーニュ、クリスチアーヌ・バリー、ロジーヌ・リュゲエ等が助演する一九四五年作品である。
フイリップ・クラランスは、婦人服仕立屋としてパリでも名人といわれる腕利きである。職業柄、毎日婦人に接しているせいもあるが、性来の浮気男で女を口説くのも名人だ。冬の婦人服の新しいデザインと、目新しい女を得たいことが、彼のさしあたっての望だったが、友人ダニエル・ルウソーがリヨンに出かける前日、フイリップはダニエルの許嫁ミシュリーヌ・ラフォーリと初めて会った。女に知合いは多いが、彼女はすばらしい清純な美しさの持ち主である。婚約はしているがダニエルを愛しておらぬミシュリーヌは口説き上手のフイリップにほれてしまった。彼女はダニエルがリヨンから帰ったら、事情を打明けて婚約を解消してもらい、フイリップと結婚したいと考える。ところが、何としたことか、フイリップは処女の操をおのれのものとしながら、結婚の意思などはてんで無いことがわかる。ミシュリーヌは身もよもあらぬ心地がしたが、何ともやむを得ない。心ならずもダニエルのもとに帰って結婚する決心をして、花嫁衣しょうを、フイリップに注文する。彼は流行の新型の考案に一心になっていたが、ミシュリーヌの注文を受けると、彼は急に彼女を真実愛していることを感じ、彼女がダニエルと結婚するのを思いとどまらせようとする。ところが彼女は男心の変りやすさにいや気がさし、フイリップともダニエルとも結婚しないで、何処かへ行ってしまいたいと考える。フイリップが一緒に行こうとやって来る。そこに来合せたダニエルは、ミシュリーヌとフイリップは駈落するのだと感違いして、矢庭にフイリップに打ちかかり、外へほっぽり出す。彼はパリを終夜さまよい歩いて翌朝帰宅した。そしてミシュリーヌのために縫いあげた花嫁衣しょうをろう人形に着せて店を閉じてしまった。そこにミシュリーヌとダニエルが連立って訪れ、戸を破って入るとフイリツプ・クラランスの姿はなく、窓があいたままであった。窓から下を見おろすと花嫁衣しょうを着たフイリップは身を投げて死んでいた。
Phillippe Clarence
Micheline Lafaury
Daniel Rousseau
Solange
Paulette
Anne Marie
Lucienne
監督、脚本
脚本、台詞
脚本
撮影
音楽
衣装デザイン
セット
[c]キネマ旬報社