フィリス・カルヴァート
Fanny
名門の出の映画監督として知名で、「ピグマリオン」「星への道」等の作あるアンソニー・アスキスが、一九四四年にものしたメロドラマで、脚本はマイケル・サドレアが書きおろした。撮影は「灰色の男」「ウォタルー街」のアーサー・クラブトリーである。主演は「灰色の男」「七つの月のマドンナ」のフィリス・カルヴァートで、「霧の夜の戦慄(1947)」「灰色の男」のジェームズ・メイソン、「キャラバン」「灰色の男」のスチュワート・グレンジャー、「果てなき船路」のウイルフリッド・ロースン、「キャラバン」のジーン・ケント、ノラ・スウインバーン、ヘレン・ヘイ、スチュアート・リンゼル等の「灰色の男」の助演者が多く出演している。
一八七〇年、ファニイは国務大臣クライブ・シーモアの隠し子であった。酒場を営んでいる養父が乱暴者のマンダーストーク卿に殺され、養母が良人の後を追って死んだ時、シーモア家に召使いとして引き取られた。ファニイは実父から生れた時の事情を聞くと長い間知らぬ顔をしていた父を恨むよりも、断ち難い肉親の愛情のきずなに、クライブを父と慕う気持ちを否み得なかった。父の秘書ハリイ・ソマフォードは美しいファニイに興味を抱いた。シーモア夫人アリシアはファニイの秘密を知らず、彼女を小間使にしたが、隠し子とは現われやすく、彼女は良人とファニイの間柄を知った。マンダーストーク卿と不義の仲であるアリシアは、良人を脅迫し巨額の慰しや料を寄越して離婚することを要求した。クライヴ・シーモアは到底大臣としての名誉を保ち難いことを知り、自殺してしまった。財産管理人に指定されたハリイはシーモアの死の共に失そうしたファニイが酒場の女給をしていることを発見した。彼女に会って、シーモアの娘であって情婦ではなかったことを知ると、彼はホッとした。ハリイは彼女を愛し始め、結婚したいと考えた。しかしこの結婚には彼の母も姉のケイトも大反対で、ケイトは秘かにファニイを訪ね、弟の出世の妨げをするなと申し渡した。愛人の為になることならとファニイはまた行方を晦ました。ハリイはロンドン中を探し回り、ファニイの親友でレビューの踊子ルーシーに相談した。事情を知っているルーシーはある料亭でハリイとファニイを会わせてやった。しかしこの楽しい晩さんは、アリシアを伴って現われたマンダーストーク卿の侮辱によって台なしにされた。憤慨したハリイは卿を撲り倒し、ファニイの勤めている酒場へ帰り、結婚してくれと頼んだ。暗い過去を恥じるファニイは決心が出来ず、一年の間結婚しないで同せいしようと申し出た。ハリイはファニイを伴れてパリ見物に赴いたところ、奇しくもマンダーストーク卿とめぐり会った。彼はバレーのスターとなっているルーシーのパトロンとなっていた。美しいファニイの幸福を破壊する好機だと思って、卿はハリイの顔に酒をぶっかけて決闘をいどんだ。名射手の卿の弾丸を受けてハリイは重傷を負いながらも、神は悪を憎むか卿はハリイに射殺されてしまった。重傷のハリイを看護しているファニイを、ケイトは再び訪れて立ち去れと命じた。しかし今は自分の愛情に自信を持つファニイはケイトを追い返した。
Fanny
Lord Manderstoke
Chunks
Harry Somerford
Lusy
Alicia
Mrs. Hopwood
Kate Somerford
Mrs. Somerford
William Hopwood
Clive Seymore
Mrs. Heaviside
Carver
Dr. Lowenthall
Fanny as child
Lucy as child
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