マルチェロ・マストロヤンニ
Sandor Rosznyai
大戦前夜のブダペストの伝説的なクラブ“ミス・アリゾナ”に生きた2人の男女の人生を描く大河ドラマ。製作はジャコボ・カパンナとジョゼッペ・ペルッジャ、監督はハンガリーのパル・サンドール、脚本はサンドールとアルフレード・ジャンネッティの共同、撮影はエレメール・ラガリィ、音楽はアルマンド・トロバヨーリが担当。出演はマルチェロ・マストロヤンニ、ハンナ・シグラほか。
1920年、ブダペスト。元歌手のミツィ・シュガー(ハンナ・シグラ)は、夫をダイアモンドを狙う組織に殺され、生活を支えるためカムバックを計るがうまくいかない。再び組織にも狙われる所を、ユダヤ系ハンガリー人サンドール(マルチェロ・マストロヤンニ)に助けられ、二人の間に信頼関係が芽生えてゆく。サンドールはミッツィと息子のアンドレアと共にささやかな芸を披露しながら食いつないでゆくが、ミッツィの亡き夫の残したダイアモンドが見つかったことからブダペストに念願の高級ナイトクラブ「ミス・アリゾナ」を開くことができた。店は隆盛をきわめ、息子のアンドレアも若いダンサー、マルタ(アレッサンドラ・マルチネス)と結婚する。様々な客の中にはミッツィに想いを寄せる正体不明のアメリカ人青年スタンレー(ウルバノ・バルベリーニ)の姿もあった。しかし一九三八年、第二次世界大戦が始まり、華やかな日々は終わりを告げる。戦場行きを恐れアンドレアは自殺、傷心のサンドールとミッツィに追い討ちをかけるように、ハンガリーを占領したナチスによってユダヤ系のサンドールは逮捕され、スタンレーはスパイ容疑で射殺される。ミッツィの口利きで収容所行きは免れたものの、爆撃で廃虚と化した「ミス・アリゾナ」の前に佇むサンドールとミッツィの見ているものはもはや同じ光景ではなかった。
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