アンソニー・ヒギンズ
Mr. Neville
屋敷の庭を描く画家の12枚の絵の中に浮かび上がる、その屋敷の主人の死をめぐる完全犯罪の謎を追ったペダンチックな一編。製作はデイヴィッド・ペイン、監督・脚本は「コックと泥棒、その妻と愛人」のピーター・グリーナウェイ。本作は長編第一作にあたる。撮影はカーティス・クラーク、音楽をマイケル・ナイマンが担当。出演はアンソニー・ヒギンズ、ジャネット・スーズマンほか。
名誉革命後の17世紀末、画家のネヴィル(アンソニー・ヒギンズ)は英国南部の郷紳(ジェントリー)、ハーバート家に招かれる。主人のハーバート氏は不在で、代わりに出迎えた夫人のヴァージニア(ジャネット・スーズマン)とネヴィルは、夫が戻るまでに屋敷の絵を12枚完成させること、報酬は一枚8ポンドに寝食の保証、そして夫人はネヴィルの快楽の要求に応じる、という内容の契約を結ぶ。翌日からネヴィルの仕事は始まったが、彼はそのうち屋敷内の微妙な人間関係に気づく。ハーバート氏の娘サラ(アン・ルイーズ・ランバート)、その夫タルマン(ヒュー・フレイザー)そして公証人ノイズ氏(ニール・カニンガム)。彼らは誰もが胸に一物秘めているかのようだった。そして2日目から不思議な出来事が起こり始める。ネヴィルの描こうとする構図の中に、ハーバート氏のシャツやマント、裂かれた上着などその身に何かが起こったことを暗示するようなものを何者かが紛れ込ますようになったのだ。構わず描き続けるネヴィルにサラは母は単純な女ではないと謎をかけた上で、自分も母と同じような密通の契約を結ぶ。ついに12枚の絵が完成した時、ハーバート氏の死体が発見された。今だに事情の解らないネヴィルは謎の晴れないまま次の仕事先に赴くが、後に残された絵をめぐって誰もが自分に嫌疑のかかることを恐れ、結局ノイズ氏が絵にはサラの不義の証拠が隠されているといってタルマン氏に高く売りつけ、その金でハーバート氏の記念碑を建てることになる。その下絵を書くためにネヴィルが呼ばれるが、彼を待っていたのは、ヴァージニアとサラからの、種を残すのに役立ってくれた、という残酷な感謝の言葉だった。結局彼は利用されただけだったのか? その答えも出せぬままネヴィルは闇の中で仮面の紳士たちに襲われ、目をつぶされた末に殺されてしまった。
Mr. Neville
Mrs. Herbert
Mrs. Talmann
Mr. Talmann
Mr. Noyes
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