イ・ボヒ
チャヨン
伝統的な儒教道徳に縛られながらも流れ込む西洋文化にさらされ、性に目覚めてゆく一人の少女の体験をエロティックに描く韓国初のセミ・ポルノ。製作は李泰元、監督・脚本は「暗闇の子供たち」の李長鎬、撮影はソ・ジョンミン、音楽をチョン・ミンソプが担当。出演は李甫姫、安聖基ほか。
ソウルの音楽大学に通うチャヨン(李甫姫)は幼ない頃アメリカ人のフルート教師にひざをいたずらされて以来、音楽を聞くたびに性的衝動に襲われるという奇妙な症状に悩まされていた。しかし自らめかけの子として生まれ、現在外に女を囲って子供までもうけている夫に激しい憎悪を燃やす彼女の母親は、そんなチャヨンに対して異常なまでの潔癖症であたり、厳しく家に縛りつけようとするのだった。ある夜のこと、クラシック・コンサートに出かけた彼女はまたもあの衝動に襲われ、名家の子弟であるチョビン(安聖基)という恋人がありながら、かねてより彼女につきまとっていた不良のスイリに心とは裏腹に身を任せてしまう。自分でも制御の利かない肉体にショックを受けた彼女は田舎に静養に向かうが、ここでも若く美しいチャヨンは村の若者たちによって輪姦され、さらにはその姿を写真に撮られて脅迫を受ける。ついに心の均衡を失なった彼女は入院する。医師の診断はこうだった--。余りにも厳しい母親によって植えつけられた性への罪悪感が性的衝動という形で噴出したのだと。そしてそこから放されやっと平静を取り戻した彼女をいつもと変わらぬ笑顔で迎えるチョビンの姿があった。
[c]キネマ旬報社