シェ・ティエン
刑老人
辺境で慎ましい生活を送っていた老人が、文化大革命という政治闘争に巻き込まれ愛するものを失う姿を通じて、貧しい民を救うという名目の下に非道が行われた時代と、体制の矛盾を告発した人間ドラマ。「芙蓉鎮」「乳泉村の子」の巨匠・謝晋が、「牧馬人」と同じ原作者、張賢亮の小説『刑老漢和狗的故事(刑老人と犬の物語)』を映画化。脚本は「乳泉村の子」の李准、製作は楊博と成志谷。撮影の蘆俊福と高根栄、音楽の金復載ら、主要スタッフは謝晋作品の常連。主演は「香魂女-湖に生きる」の斯琴高娃と、監督として知られる謝添。戦前のスター俳優でもあった謝添は今回、監督のたっての要請で30年ぶりの映画出演を果たした。
1972年、辺境の地・寧夏にある村で、長年愛犬と共に畑を耕して暮らしている刑老人(謝添)の家に、山の向こうの村から物乞いの女がやって来た。女(斯琴高娃)は、年のころは30代半ばで、何日も飲まず食わずの様子である。刑老人は水と食料を与える。夢中で食べた女はうとうとと眠ってしまった。物音で目を覚ますと戸外は砂嵐が吹き荒れ、老人の勧めで女は一晩を彼の家で過ごした。顔の汚れを落とし身を整えた女は、豊満で女盛りの美しさをたたえていた。その日から女は、老人の身の回りの世話をするようになった。60歳を越えた老人は、貧しさから一度も嫁を取ることなく、長年愛犬と暮らしてきた。気立てがよく、よく働く女は老人にとって、紛れもなく天女だった。女は山野村に2人の子供を残していた。文化大革命の嵐が吹き荒れた山の村で、富農出身というだけで攻撃された彼女は、飢饉になった村の食費を一人分浮かすために物乞いに出たのだった。秋が来て穫り入れが終わった後、刑老人は町に砂を運ぶために3日間家を開けた。女は涙ながらに老人を見送った。彼が戻った時、きちんと整頓された家の中に女の影はなかった。沈み込む老人に追い打ちをかけるように、年間に穀物90キロを消費する犬を飼うことは無駄であるとして、犬殺しの命令が発令された。愛犬に最後の別れを告げた老人の耳に、非情な銃声が響く。
刑老人
女
魏天貴(ウエイ・ティエンクイ=生産隊隊長)
天貴の妻
魏(ウェイ)老人
小雪(シャオシュエ=魏老人の孫)
馬三婆(マーザンポー=馬婆さん)
小虎媽(シァオフーマ=馬三婆の嫁)
老唐(ラオタン=床屋の主人)
喬(チァオ)老人
聶宣伝工作隊長
監督
脚本
原作
製作
製作
撮影
撮影
音楽
美術
編集
編集
衣装デザイン
字幕
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