キム・ジミ
ファヨン
朝鮮戦争によって離散した家族の心の痛みを通して、南北分断の悲劇をとらえた人間ドラマ。監督は「シバジ」「アダダ」の韓国映画界の巨匠・林潅澤。スタッフは撮影の鄭一成をはじめ、林潅澤作品でおなじみの顔ぶれがそろっている。主演は57年にデビュー後、800本に及ぶ出演作を誇り、プロデューサーとしても活躍する「ミョンジャ・明子・ソーニャ」の金芝美と、申星一の2人のベテラン。共演は「波羅羯諦 ハラギャティ」の韓支壹、「曼陀羅」の全茂松ら林潅澤作品の常連俳優が脇を固めている。
1983年夏。上流階級の美しい中年女性ファヨン(金芝美)は、朝鮮戦争で離散した家族を捜す韓国KBSテレビの公開番組を見ながら、深く悩んでいた。彼女はかつて愛し合った男の息子を生みながら、戦火の下で生き別れになったつらい過去があった。ファヨンは良識ある夫の理解を得て、思い切って“出会いの広場”を訪ねる。必死で家族を捜し求めるビラやプラカードが散乱し人々が渦巻く中で、彼女は思いがけず死んだとばかり思っていた昔の恋人ドンジン(申星一)と再会する。2人は忘れかけていた遠い過去の記憶に引き戻される。彼らはTVで見た息子らしい男の手掛かりを求めて懐かしい村・キルソドムへ向かった。貧しくすさんだ生活を送るそ(韓支壹)を目の当たりにして、2人は血の騒ぐのを感じながらもただ戸惑うばかりだった。ソクチョルとその妻(金知瑛)も、2人の来訪に喜びと混乱をかくせない。ファヨンにもドンジンにも今の家族があり、今の生活があった。心の葛藤をどうすることもできず、彼らは結論を血液判定に委ねる。親子であることは、ほぼ間違いないという医師のことばに、ファヨンは100パーセントの確証がなければ受け入れられないと告げ、ドンジンとチョクソルの前から静かに去った。