処女作「悪夢の香り」が77年のベルリン国際映画祭批評家賞を受賞し、一躍世界にその名を知られるようになったフィリピンの映画作家キドラット・タヒミックが、ドイツ人の妻との間に生まれた3人の子供たちの成長過程を追いながら、家族と国家、歴史を問い直すドキュメンタリー。81年から撮影を始め、86年より「僕は怒れる黄色」のタイトルで上映され、上映の度ごとに新たな撮影部分を加え、再編集している作品の94年版(監督は“終わりのないドキュメンタリー”と呼んでいる)。資材の欠乏や恒常的な停電といった困難にもめげず、天分のユーモアと創造力で製作を続ける監督の姿勢が感動を呼ぶ。製作・監督・脚本はキドラット・タヒミック、撮影はタヒミック、ロベルト・イニゲスほか、音楽はボーイ・ガロヴィロとシャント・ヴェルドゥン。ナレーションは監督の長男のキドラット・ゴッドリーブが担当。アンドレイ・タルコフスキー、小川紳介といった映画作家たちも登場する。日本公開に当たり、一般公開に先立って監督のパフォーマンス付きの全国巡回上映が行われた。第一部『とるにたらない緑』では、ジョン・フォードが「駅馬車」で舞台としたモニュメント・バレーで、子供たちが監督と“第三世界”について対話する場面から始まる。そして母親の故郷であるドイツ、映画祭で訪れたアメリカから日本への旅行記がつづられる。第2部『怒れる黄色』は、黄色を反独裁者運動のシンボルとした政治プロテストの渦中にある子供たちを記録。第3部『好奇心の強いピンク』は、マルコス政権の独裁統治終了後の矛盾を扱う。第4部『惨たんたる灰色』は、火山の爆発・台風の襲来などの天災に見舞われ、政治的にもますます矛盾を露呈していくアキノ政権といった、苦難と絶望感の濃い80年代の社会情勢をとらえる。この後さらに、『植民地色の赤、白、青』『調和のとれないディズニー色』『インディオ先住民の茶色』と続き、フィリピンの先住民族イゴロト族の豊かな文化と精神に接し、失われた大陸レムリアへ思いを馳せ、映画は増殖していく。
ストーリー
※本作はドキュメンタリーのためストーリーはありません。
キャスト
Kidlat Gottkieb Kalayaan
Kawayan Thor Kalaya an
Kabunian Cedric Enrique
Katrin Luis
Virginia Oteyza de Guia
Lopez Na Uyak
デニス・ホッパー
フランシス・フォード・コッポラ
アンドレイ・タルコフスキー
小川紳介
スタッフ
監督、脚本、製作、撮影、編集
キドラット・タヒミック
撮影
ロベルト・イニゲス
撮影
Roberto Villanueva
撮影
Trin Minh Ha
撮影
Kublai Abiad
撮影
Roy Jackson
撮影
Regina Tuazon
撮影
Kidlat Gottkieb
音楽
シャント・ヴェルドゥン
音楽
ボーイ・ガロヴィロ
編集
Karl Fugunt
編集
Maureen Gosling
録音
Ed de Guia
字幕
古田由紀子
コラム・インタビュー・イベント
ニュース
作品データ
- 原題
- Bakit Dilaw Aug Gitna Ng Bahag-Hari?
- 製作年
- 1994年
- 製作国
- フィリピン
- 配給
- シネマトリックス=パンドラ
- 初公開日
- 1994年7月9日
- 製作会社
- キドラット・タヒミック
- ジャンル
- ドキュメンタリー
[c]キネマ旬報社