ワン・チーウェン
拉拉(ララ)
3人の若者の愛と暴力の物語を通して、青春の彷徨を描いたドラマ。いわゆる第六世代と称される中国若手監督の一人ロウ・イエ(65年生まれ)のデビュー作で、彼の友人の実話に基づいている。陳凱歌らの第五世代のデビュー時とは異なり、第六世代は監督自ら資本を求めて製作することを余儀なくされているが、本作も不動産会社の出資を得て製作されている。革命開放の空気の中、思春期を過ごした60年代中期以降に生まれた監督と同世代の若者たちの生活ぶりと心情が、リアルに描かれている。撮影は「おはよう北京」の張錫貴。美術はテレビドラマで高く評価されている李継賢で、監督以下、スタッフの大部分が北京電影学院の卒業生で占められている。主演は「べにおしろい 紅粉」の王志文、「おはよう北京」の馬暁晴ほか。『中国映画祭95』で上映。
1984年、上海。少女リーと少年アシーの仲を妬んだ同級生は、教師に密告。リーを中傷から守るためにアシーは同級生に復讐しようとするが、勢い余って殺害してしまう。アシーはリーとこれが最後の逢瀬と抱き合った後、警官に連行された。93年。刑期を終え、出獄したアシーは懐かしい街並みの中、リーを捜し求める。だが、リーは偶然知り合ったララとの愛を育んでおり、既に心はアシーから離れていた。ララはミュージシャン志望で、仲間を求めていた。勤めているファーストフードの店でリーが知り合った、キャリアウーマンのチェンの夫がバンドのメンバーを探していると聞き、オーディションを受ける。ララは歌唱力を認められて採用された。だが、アシーは、リーが戻ってこなければ、バンドの初コンサートをメチャクチャにすると宣言。当日は案の定、アシーの仲間たちで一杯だったが、その彼らの心までも揺さぶるように、ララの魂を絞り出すような歌声が会場に響いた。コンサートはまずまずの結果に終わった。アシーは決着を着けるべく、ララを呼び出す。激情に駆られた2人は争い、ララは奪ったナイフでアシーを刺殺する。97年。街の様子は変わらない。
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