アイ・リーヤー
二[女莫](アルモ)
中国の現代農村の働き者で意地っぱりな主婦が、物欲に振り回されるさまを喜劇的なタッチで描いた諷刺劇。監督は86年にデビュー以来、『追跡者(原題・最後的瘋狂)』(87)、『狂気の代償(原題・瘋狂的代価)』(88、両作共未公開)など、中国映画界においてエンターテインメントの作り手として評価されてきた周暁文の第9作で、彼の初の農村もの。たくましい生命力と美しさを感じさせるヒロインのアイ・リーヤーが圧巻。94年ロカルノ国際映画祭で審査員大賞、国際映画評論家大賞、キリスト教審査団賞、青年審査団ゴールド賞の4賞を受賞、中国国内では華表賞主演女優賞ほか3賞を受賞。「中国映画祭95」の1本として上映された。
山あいの農村。アルモ(アイ・リーヤー)は歳の離れた夫と結婚し、フーツという8歳になる息子がいる。元村長の夫(戈治均)は、病気のため働きもせず、性的にも不能だ。アルモは勤勉で働き者、利発でたくましい女で、毎日、麻花(ねじり揚げ菓子の一種)を作っては町まで売りに行く。一家の生計は全て彼女にかかっており、朝も暗いうちから小麦粉を練っては揚げる日々だった。隣家のシャーツ(リウ・ペイチー)の妻(張海燕)と彼女は犬猿の仲で、金回りの良いシャーツがカラーテレビを買ってからというもの、フーツが入り浸りなのも腹立たしい。ある日、町で初めて大型テレビを見たアルモは、その“県知事でも買えない”テレビを買うことを決意。そんな彼女にシャーツが町のレストランを紹介してくれ、アルモは住み込みで働き始めた。同僚の職人が重傷を負った時、彼女は初めて輸血するが、それが金になると知るや、昼は調理場で働き、合間を見ては血を売り始める。そして、紙幣を数えてはテレビを買う夢を見る毎日が続き、心配するシャーツや夫の言葉も耳に入らないようだった。また、彼女は親切にしてくれるシャーツと不倫関係になるが、彼が自分の給料の一部を払っている事実を聞くと激怒し、怒りがさらに彼女をテレリへ駆り立てる。一方、シャーツが商売女に手を出したと言って彼の妻がアルモに泣きつき、なんとなく遺恨も晴れた。とうとうお金がたまり、家にテレビが運び込まれた。ようやく手に入れたテレビを前に、ひどく疲れ、虚しい気持ちになったアルモは眠りこけるのだった。
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