エマニュエル・ベアール
Nelie
美しい妻に対する夫の異常な嫉妬をめぐる心理サスペンス。「恐怖の報酬」「悪魔のような女」で50年代フランスを代表するサスペンス映画作家、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督が64年に中途で製作を放棄した脚本を基に、ヌーヴェルヴァーグの旗手だったベテラン、クロード・シャブロルが時代を現代に置き換えて脚色・監督。製作は「トリコロール」(三部作)など現代フランスを代表するプロデューサー、マラン・カルミッツ。撮影はシャブロルとは92年の『Betty』 (未公開) で組んだ「オリヴィエ オリヴィエ」のベルナール・ジツェルマン。(前作『L'oeil du Vichy (ヴィシーの眼) 』は戦時中の記録フィルムの再構成だったので除外すれば、『Betty』、本作、次作「沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇」と3本連続になる。)音楽は監督の実子で「ボヴァリー夫人」など80年代以降の父の作品の音楽を多数手掛けるマチュー・シャブロル。美術はエミール・ジゴ、録音はジャン・ベルナール・トマソン、編集はモニーク・ファードウリュ。出演は「愛を弾く女」のエマニュエル・ベアール、「プレタポルテ」「フレンチ・キス」のフランソワ・クリュゼ、「ラヴィ・ド・ボエーム」「レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う」のアンドレ・ヴィルムス、マルク・ラヴォワース、「オディールの夏」のナタリー・カルドーヌ。そのほかホテルの常連客として、「プレタポルテ」のジャン・ピエール・カッセル、ドラ・ドル、クリスチアーヌ・ミナッツォリ、『気のいい女たち』(特別上映のみ)のマリオ・ダヴィドら60年代のシャブロル映画の常連が友情出演的に顔を揃えている。
ポール(フランソワ・クリュゼ)は湖畔のリゾートホテルの新しい主人になり、美しいネリー(エマニュエル・ベアール)とも結婚して幸福そのものだ。二人のあいだには愛らしい男の子も生まれ、ホテルも絶好の立地条件と主人夫婦の家庭的なもてなしが受けて大繁盛。ポールは大忙しだが、ネリーはそんな彼を生来ののんきさでおおらかに支えていた。だがそんな彼女の愛らしさが仇になり、ポールには彼女が親しげに話す相手がことごとく恋敵のように見え始める。特に目障りなのは近所の青年マルティノ(マルク・ラヴォワース)だが、そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、ネリーはその彼と二人きりで部屋を暗くして、写真のスライドを見せていた。彼は疑いがつのり、街に母に会いに行く妻を尾行しはじめるが、彼女は彼に嫉妬されるほど愛されていると逆に喜ぶ始末。ある日、彼は湖の上で彼女がマルティノの運転するボートで水上スキーを楽しんでいるのを目撃する。休憩のため湖の島に停まるボート、それは彼の目には不倫の決定的証拠に映った。8ミリ映画が趣味の泊まり客デュアメル氏(マリオ・ダヴィド)が映写会を開いた。水上スキーの光景が映写され、ポールは客たちの見る前で錯乱する。デュアメルをはじめ客たちは怒ってホテルを出ようとするが、ネリーがなんとか引き止める。するとポールはそれはネリーが客たちと愛人関係にあるからだと考える。ポールはついにネリーに暴力を振るい、彼女は家庭の主治医アルヌー医師(アンドレ・ヴィルムス)の所に逃げ込む。翌朝ポールはアルヌーを訪ね、うちの妻は病的な嘘つきで偏執狂だと言う。危険を察知した医師はネリーを精神病院に入れるからとポールをなだめ、明朝夫婦で来るようにいう。だがポールは今度はネリーとアルヌーの情事を疑う。その夜、ポールはネリーが客との逢引きに行かないようにと、彼女に多量の睡眠薬を飲ませる。翌朝、妻を優しく起こして医師の所にいく準備をするポール、だがふと気がつくと、ネリーは睡眠薬で深い眠りに落ちたまま、ベッドに縛りつけられていた。「俺はどうしたんだ」……〈終わりなし〉のエンド・マーク。
Nelie
Paul
Docteur Arnou
Martino
Marilyn
Monsieur Vernon
Madame Vernon
Monsiuer Duamel
Madame Chabert
Clotilde
Julien
監督、台詞、脚色
原案
製作
撮影
音楽
美術
編集
録音
字幕
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