渡瀬恒彦
田島松之丞
十四歳の少年と娼婦が天城峠を旅しているとき起きた殺人事件と、三十年間、事件を追い続けた老刑事の姿を描く。松本清張の同名の小説を映画化したもので、脚本はこの作品が監督デビュー作となる「夜叉ヶ池」の三村晴彦と「炎のごとく」の加藤泰の共同執筆、撮影は羽方義昌がそれぞれ担当。
静岡で印刷屋を営む小野寺のもとに、田島と名乗る老人が、県警の嘱託で「天城山殺人事件」という刑事調書の印刷を依頼しに来た。原稿を見て激しく衝撃を受けた小野寺は十四歳の頃を思い浮かべる。小野寺は十四歳のとき、母の情事を目撃し、それまで彼にとって、神であり恋人であり、亡き父を裏切った母が許せず、静岡にいる兄を訪ねて一人で天城越えの旅に出た。少年は素足で旅する若い娘ハナと出会い、並んで歩いた。少年は美しいハナに母の面影を感じる。ところが、道中、ハナは一人の土工に出会うと、無理矢理に少年と別れ、男と歩きだした。気になった少年が後を追うと、草むらの中で情交を重ねる二人を目撃する。その土工が殺された。ハナが容疑者として逮捕される。土工と歩いているところを目撃した者もおり、彼女は土工から貰ったと思われる金も持っていた。さらに、現場には九文半ほどの足跡があり、ハナの足も九文半だった。警察の取調べに対し、ハナは土工と関係して金を貰ったことは認めたが、殺しは否認した。売春宿の女だったハナは一文なしで逃げだし、金が必要だった。結局、ハナは証拠不十分で釈放された。彼女は真犯人を知っている様子だか、頑として口を割らず、事件は迷宮入りとなった。田島老人はそのときの刑事だった。「九文半の足跡を女のものだと断定したのが失敗でした。犯人は子供でした」と老人は語る。そして、犯人である子供の動機が分らないと続ける。犯人は、少年=小野寺であった。少年はハナと土工の情交を見て、母が犯されている……そんな思いが浮かんだ。ハナにも、少年と天城を肩を並べて歩いているうちに、彼の純粋な気持ちが伝わったのだろう。だから、目撃した事実を口にしなかったのだ。刑事だった老人は、三十年ぶりで小野寺が真犯人であるという推理に達し、印刷を依頼に来たのだ。しかし、もう時効であった。
田島松之丞
大塚ハナ
小野寺建造
小野寺建造・中学時代
建造の母
大男の土工
建造の叔父
土谷良作
その女房
旅の菓子屋
旅の呉服屋
茶店の婆さん
江藤署長
山田警部補
赤池巡査
黒田運転手
女子事務員
県警の広報係長
国立病院の医師
監督、脚本
脚本
原作
製作
製作
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
助監督
スチール
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