監督、製作
「生きる」(昭和46年)につづく無期舎第二回作品。沖縄の離れ小島・水納島。五世帯二十三人しか住んでいない小さなこの島は、現在、土地問題で騒ぎかえっていた。十三年前に琉球政府の勧めで離島苦解消のため、十八家族が宮古本島に集団移住した。彼らは農業移民として移ったのだが、復帰後の砂糖の値段の暴落のため、本土への出稼ぎを強要されるようになった。水納島に持っていた土地も生活苦のために坪三十円で土地ブローカーに投げ売りした。宮古島の移住集落。その戸主のほとんどか愛知県の下請小企業へ出稼ぎに出て、残っているのほ老人と女・子供だけである。映画は、土地問題の実態を、当人の戸主たちから聞き出すべく、愛知県の出稼ぎ先の工場へと舞台が変る。ひどい食事。一汁一菜以下である。全員夜8時から朝8時までの夜勤を希望する。少しでも家族に金を送りたいためである。耳をつんざく機械音、むし暑い室内、老朽化した寮、万年床。一日が終ると、ひたすらカレンダーにバツをつけて、宮古へ帰る日だけを待ちわびている彼ら。栄養失調のための脚気などで、体をこわしていく。それでも無理をして夜勤を続ける。やがて「表情」すら失っていく。彼らにとっては土地を売った事などはどうでもよい事であり、彼らの最大の関心事は、宮古の家族からの便りと、帰郷の日が近づく事である。水納島にいた時には、宮古島が彼らにとってみると「みやこ」であったろう。しかし、宮古に移り住み、大和(ヤマト)に出ていかざるを得ない彼らにとって、大和(ヤマト)ははたして「みやこ」でありうるのだろうか。
ストーリー
※ドキュメンタリーのためストーリーはありません。
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作品データ
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