稲田夏子
撫子(なでしこ)
8ミリで「明日に向って走れない!」(47年)と「死ぬにはまにあわない!」(48年)を撮ってきた大森一樹が、はじめて16ミリで作った通称“ない!”シリーズの第3作。23歳の大森は京都府立医大の三年生。桃色遊戯は、神戸っ子、キネ旬の愛読者、鈴木清順の熱狂的ファン、という三つの共通点をもつ映画青年たちのグループ。(16ミリ)
神戸の街。自閉的な青年梅田は、ある日喫茶店でちょっと面白い女の子と知り合いになった。彼女は撫子ちゃんといって、前衛美術の創作をやっている少女である。梅田の大学には佐倉という映画キチガイの先輩がいた。彼にとって鈴木清順は神様なのであった。飲み屋で知り合ったチンピラやくざ風の男風間が競輪で大穴を当ててしまい。この金で佐倉は念願の映画を撮ることになった。吸血鬼映画で、主演は友人の萩本と撫子ちゃん、殺し屋役で風間が助演する。撮影が終わり、映画ができあがりそうになった時、撫子ちゃんは某映画監督にスカウトされて「マリリン・モンロー・ノーリターン」という商業映画に出演することになってしまう。主演女優の出席しないカントク佐倉の処女作の試写会は、彼の行きつけの飲み屋でささやかに行なわれたのであった。
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