一文字愛
純
30歳の青山定二の処女作。ロケは、すべて真夏の宮崎県で行なわれた。(16ミリ)
テントと自作の8ミリ映画を小車に載せて放浪の旅をつづける純という青年が主人公。彼は高千穂の峰が見える雑木林の中の水車小屋で、一人ぼっちの少女ユリと知り合いになる。彼女もまたあてのない旅をしているのであった。まだ乳離れのしていないインポテンツの青年は、荒々しく生きた神々の登場する神話を物語る不思議な少女と一緒にあてどもなくさまよい歩く。二人は、アクセサリーを売り歩いているヒッピー風の男・二郎と出会うが、義眼を嵌めたこのもの静かな青年は男色家であった。純は自作の映画を見てもらおうとして家々を訪問するが、どこでも追い払われてしまい、見てくれたのはある老姿ひとりだけだった。別れてバラバラになった三人は、やがて再会するが、義眼を失くしてしまった二郎は、はっきりしない理由で自殺してしまうのであった。
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