渥美清
車寅次郎
“男はつらいよ”シリーズ第17作目。フーテンの寅が捲き起こす人情喜劇で、今回は風変りな日本画壇の大御所の老人と芸者が相手役となる。脚本は「男はつらいよ 葛飾立志篇」の朝間義隆、監督は脚本も執筆している同作の山田洋次、撮影も同作の高羽哲夫がそれぞれ担当。
春、4月。東京は葛飾柴叉の帝釈天は、入学祝いの親子連れで賑わっている。“とらや”を営むおいちゃん夫婦は、寅の妹さくらの一人息子・満男の新入学祝いで、大忙し。そんな所へ、久し振りに寅が、旅から帰って来た。ところが、さくらが元気がないので寅が問いただしてみると、満男の入学式の時に、先生が満男が寅の甥であると言ったところ、父兄が大笑いしたというのだ。寅はそれを聞いて怒ったが、おいちゃんたちに、笑った父兄より、笑われる寅が悪い、と決めつけられて大喧嘩の末、家を飛び出した。その夜、寅は場末の酒場でウサンくさい老人と知り合い、意気投合して、とらやに連れて来た。ところが翌朝、この老人はぜいたく三昧で、食事にも色々注文をつけて、おばちゃんを困らせる。そこで寅は老人に注意すると、老人はすっかり旅館だと思っていた、お世話になったお礼に、と一枚の紙にサラサラと絵を描き、これを神田の大雅堂に持っていけば金になる、といって寅に渡した。半信半疑の寅だったが、店の主人に恐る恐るその絵を渡すと、驚いた主人は7万円もの大金を寅に払ったのだ。この老人こそ、日本画壇の第一人者・池ノ内青観だったのだ……。それから数日後、兵庫県・竜野。青観が生まれ故郷の竜野へ市の招待で来た時、偶然、寅と会った。市の役人は、青観と親しく話す寅をすっかり青観の弟子と勘違いして、二人を料亭で大歓迎。美人芸者のぼたんの心ゆく接待にすっかりご機嫌の寅。翌日、用事があると言って出かけた青観の代理で、寅は市の観光課長の案内で、昼は市内見物、夜はぼたんを連れてキャバレーやバーの豪遊に、観光課長も大弱り。その頃、青観は初恋の人を訪ねて帰らぬ遠い青春時代の感傷にひたっていた。やがて、寅はぼたんに別れを告げ、竜野を発った。夏が来て、とらやにぼたんが寅を訪ねて来た。ぼたんは、苦労して貯めた200万円をある男に貸したまま逃げられ、その男が東京にいるのをつきとめたので会いに来たのだった。おいちゃんたちは、いきりたつ寅を押さえて、社長をぼたんに付けて男に会いに行かせた。男は大きな中華料理屋を経営しているのだが、店は女房名儀で一銭もないと払おうとしない。巧みに法律の網をくぐりぬけているのだった。烈火の如く怒った寅だったが、おいちゃんたちに慰められ、ぼたんは「その気持だけでうれしい」と涙を流すのだった。そこで寅は、青観に事情を話して、絵を描いて貰って金にしようとしたのだが「金のために絵を描くことはできない」とはねつけられたため、大憤慨して青観の家を飛び出してしまった。一方、ぼたんは寅の温い思いやりを背に、竜野へ帰って行った。夏も盛りの頃。旅に出ていた寅はぼたんに会いに、ふたたび竜野を訪れた。ところが、ぼたんのところに青観の絵が届けられていたのだ。寅は青観を口汚くののしったことを詫びるために、東京の方角へ向かって手を合わし、感謝の言葉をくり返すのだった。
車寅次郎
諏訪さくら
諏訪博
諏訪満男
車竜造
車つね
社長
源公
御前様
芸者・ぼたん
池ノ内青観
志乃
大雅堂の主人
観光課長
係員
監督、脚本、原作
脚本
製作
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
助監督
企画
企画
スチール