江藤潤
黒岩隆三
作家を志しながら、キャバレーのボーイをしている青年の現在と故郷の高校時代の青春を描く、中岡京平の第三回城戸賞受賞作「夏の栄光」の映画化。脚本は「危険な関係(1978)」の藤田敏八と中岡京平、監督も同作の藤田敏八、撮影は「黒薔薇夫人」の前田米造がそれぞれ担当。
早朝の新宿駅。飯田行き急行に乗りこむ野崎辰雄の姿があった。父・文雄の突然の死が作家を志していた辰雄に六年振りの帰郷を促したのである。一九七二年、夏、辰雄の母、加代は若い女のもとに走った夫、文雄と別居し母一人子一人の生活を送っていた。高校三年だった辰雄は溜り場の喫茶店の真紀子に思いをよせていた。そんな辰雄の前に真紀子と親しげな同じ高校の隆三が現われた。マラソン大会があった日、辰雄は隆三に挑んだが、デッドヒートのすえ、かわされてしまう。数日後、辰雄の気持を知った隆三は、辰雄をからかうが、隆三と真紀子がいとこ同志とも知らず、むきになる辰雄に隆三は次第に好意を持つのである。卒業後、東京に出ようと思う辰雄、学校をやめて競輪学校に入る夢を持つ隆三、そして真紀子の三人は徐々に友情を深めていく。夏休み、盆踊りのあった晩、辰雄と隆三は真紀子が中村という妻のいる男と交際しており、既に子供を宿していると知らされ、裏切られた気持で夜の街を彷徨い歩くのであった。翌日、二日酔でアルバイトをしていると、隆三が足に大怪我を負ってしまった。競輪への夢も終りである……。飯田に近づくと、辰雄は見送りに来ていた螢子が列車に乗っているのを見つけた。それは彼の母に会いたい一心の行為であり結局辰雄は螢子を連れていくことに決める。飯田に着くと、父は、隆三の運転する車で轢死したことを知らされる。隆三も重傷を負っており、昏睡状態の彼を前に、辰雄は六年前の苦い思い出を噛締めるのである。父の葬儀の夜、真紀子が北海道に渡ったことを知らされる。翌朝、かつて隆三と走った道を歯を食い締って走る辰雄と、その後を自転車で追う螢子の姿があった。
黒岩隆三
野崎辰雄
野崎加代
西螢子
竹村真紀子
平井由美
戸川佐吉
野崎文雄
平井ふさ
田岡
八郎
相沢
赤点
村瀬喜代美
黒岩良子
中村志郎
杉本双一郎
監督、脚本
脚本、原作
製作
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
助監督
企画
企画
スチール
制作補
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