河原崎次郎
明
月山山麓の豪雪地帯のある寺で、一人の青年が過した一冬の生活を描く。森敦の同名の芥川賞受賞作の映画化で、脚本は高山由紀子、監督は「鬼の詩」の村野鐵太郎、撮影は高間賢治がそれぞれ担当。
鶴岡の住職に紹介状を書いてもらった明は、月山に向かった。その寺は月山の山麓に抱かれた渓谷にあり、その周囲には合掌造りの家が点在し、他所者を寄せつけない寡黙な村人たちが住んでいる。その中で、独人住いの寺番太助は温く明を迎えてくれた。明は、菜を背負い、もう遠い庄内の風物詩になっているハンコタンナの覆面をした若い娘、文子に出会う。明は、この閉じこめられた渓谷の中で、なおも溌刺とした若い生の息吹きに一瞬とまどった。雪は村全体をすっぽりと包み、隣り村まできていたバスも遮断され、村は長い冬篭りに入った。庫裡の二階に泊る明は、古い和紙の祈祷簿を貰い、それを貼り合せて和紙の蚊帳を作りあげ、吹き荒れる風の音を聞きながらその中に寝た。蚊帳の中に、電灯の光がほのかにこもり、それは、乳白色の繭の中に横たわっているようだ。そんな冬の中、村人たちは密造酒を造り、闇の酒買が村を訪れる。数日後、村人たちは寺に集まり、念仏を唱え、やがて酒宴を開いた。明は皆が酔ってくる頃、自分の部屋に戻ったが、蚊帳の中には文子が寝ており、驚いた明は、ソッとその場を離れた。村人たちが帰ると、酒宴に顔を出さなかった太助が、文子の生立ちを語った。文子の母は他所者の後を追って村を出、数年後、村に戻ると彼女を産んで死んだと言う。」「他所者と一緒になって幸せになったものが居るだがや」と太肋は話す。元旦の朝、明と出会った文子は「お前様と一緒にここを出て行ければ幸せだの…」と言う。数日後、村はずれで男女の死体が発見された。他所者の酒買と駆け落ちした加代の二人だ。村はずれに薪を積み上げ、加代の屍を焼く村入たち。その中で、合掌する文子は明に「どうしようもないさけ……」とつぶやく。その日から文子は二度と明の前に姿を現わさなかった。ある日、明は雪の中に燕の屍を見つけた。「おらほうは冬の頂だけど、平野部はもう春だろの……」太助は、強い燕ほど早く奥へと渓谷を上って来るのだと言う。明は僅かにふくらみを見せ始めた木の芽を見つめた。明は月山を下りる決意を固めた。
明
文子
太助
源助
武男
岩蔵
加代
かね
とき
方丈
方丈の妻
飛鳥の老婆
石田
文子の祖母
カラス
監督、製作
脚本
原作
製作
製作、録音
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
助監督
プロデューサー
スチール
タイトル写真
題字
容飾工芸
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