佳那晃子
竹本小伝
江戸時代後期の文化年間、当代一の人気役者、坂東三津五郎(映画では三寿五郎)の妻でありながら、男ごころをそそる美貌と性的魅力でさまざまな男たちと関係し、前代未聞の“間男番付”なるものまで売り出されたほどの女、竹本小伝の性遍歴を描く。林美一の「あんばいよしのお伝」を原案に、脚本は星川清司、監督は「ナオミ」の高林陽一、撮影は稲垣涌三がそれぞれ担当。
江戸末期、「あんばいよし小伝の好」と題する間男番付が売り出され、江戸っ子たちをビックリさせた。その女とは、人気役者、坂東三寿五郎の若い女房で、女義太夫竹本芝桝の弟子だった竹本小伝だ。番付によると、彼女の間男の数は、実に五十三人。“あんばいよしのお伝”なるニックネームをつけられ、江戸中の大評判。彼女の噂に、周囲の者は心配の様子だが、当の小伝はどこ吹く風と平気な顔。亭主の三寿五郎も人気役者の貴祿を見せて、表面は平気な風をよそおっているが、夜の契りもたえだえなだけに、若い小伝をどんなことがあっても放すまいと、心のうちでは気が気でない。小伝のおさえきれぬ性の衝動の激しさを感じてか、彼女の週辺にはいろんな男たちが、みだらな目を光らせて群がって来る。八丁堀の定町廻りの同心飯尾藤十郎、金にものを云わせ小伝に老醜の性の炎を燃やす田舎大尽の角倉庄左衛門、診察にことをよせて彼女の白い肉体をむさぼる名医、土生玄石、美貌の若女形、瀬川幾之丞などが相手だが、小伝の心は満たされない。そんな小伝の心を捕えたのは梅見の席で出会った遊び人の七之助だ。そして、彼女が暴漢に犯されそうになったとき、七之助が現われ、二人は再会する。それから、出合茶屋の一室、船宿の二階などで二人の密会は続いた。一方、藤十郎は七之助が手配中の大名荒しと知り、二人の密会の場に踏みこんだ。小伝は裸身を楯に七之助を逃がし、藤十郎のどんらんな性の責め苦に身をまかせていく。七之助は藤十郎を殺し、小伝の番付に加えられた。もう小伝は三寿五郎のもとには帰らなかった。どこへ消へたとも分らない二人。そして、小伝の妹、おるいが可愛い笑みを浮かべ、姉の小伝をめざすかのように、唇に鮮かな紅をひいていた。
竹本小伝
七之助
坂東三寿五郎
扇屋おきく
るい
飯屋藤十郎
法界屋十蔵
おでん売り
竹本芝桝
おひろ
土生玄石
角倉庄左衛門
瀬川幾之丞
札売り権八
職人
高島屋富助
監督
脚本
原案
製作、企画
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
助監督
企画
スチール
スチール
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