岡田裕介
庄司薫
高校生薫クンの一日を通して描いた揺れ動く青春。庄司薫の原作から、脚本は「二人の恋人」の井手俊郎と森谷司郎の共同執筆、監督は森谷司郎。撮影は「ブラボー!若大将」の中井朝一が担当。
この日、薫クンはまったくついていなかった。東大入試は中止になり、ホンコン風邪をひき、スキーにけつまずいて足の爪をはがし、愛犬が死んだ。薫クンは幼なじみの由美に電話する。テニスの約束を断わらねばならない。由美は薫クンとおない年の、キュートでちょっとこなまいきな女の子だ。この日も、きのう読んだばかりの「エンペドクレスのサンダル」の話を電話に出るなりまくしたてる。薫クンがすでにその話を知っていることを知った由美は「舌かんで死んじゃいたい」と電話を切った。これでまた二週間は絶交だろう。病院に行くと、兄の幼なじみの女医さんが手当てしてくれた。その豊かな肉体に対する性のうずき。薫の妄想は頂点に達する。そして、その後にくる自己嫌悪、彼は自らを分析する。自分は現代でもっともはやらないタイプのお行儀のいい優等生、だが、彼の柔軟な精神は片側で、周囲のどうでもいい問題からは逃げて、逃げて、逃げまくり、本当に重要な問題にぶつかった時のために力をとっておぐべきだということを理解していた。病院の帰りに教育ママにつかまった。家には友人の小林がたずねてきて、苦悩をさらけだす。薫クンは一人でこの狂気の時代の苦しみを背おわされたような気になってきた。彼は銀座を歩く。立ち並ぶビルや街を行く人々が、彼には今にも自分におそいかかる敵のようにみえてきた。ほんとうに街には狼がいっぱいだ。本屋の前で、突然彼は傷む足を踏まれた。四、五歳のかわいい女の子だった。薫クンは「赤頭巾ちゃん」の童話の本を買いにきたのだというこの子のために、沢山ある「赤頭巾ちゃん」の中から一冊を選び出してやった。その時、彼は自分の使命が解ったような気がした。こんなかわいい子が、自由にのびやかに遊べるような大きな森のような、海のような男になってやろう。彼はその決心を抱いて、由美に会おうと思った。
庄司薫
下条由美
小林
女医
薫の母
薫の次兄
ヨッちゃん
紀久子
地下鉄の女
松岡
看護婦
本多夫人
黒い帽子の夫人
ヒッピー髭の男
薫の友人A
薫の友人B
スピッツを抱いた夫人
監督、脚本
脚本
原作
製作
製作
撮影
音楽
美術
編集
照明
照明
録音
助監督
主題曲/主題歌
スチール
タイトルデザイン
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