菅原文太
木枯し紋次郎
色あせた紺の合羽に三度笠、長い楊枝に左ほおの優。股旅小説に新風を吹きこみ、テレビ化し話題となった、笹沢左保原作の映画化。脚本は「日本悪人伝 地獄の道づれ」の山田隆之、監督は、脚本も執筆している「現代やくざ 血桜三兄弟」の中島貞夫・撮影は「純子引退記念映画 関東緋桜一家」のわし尾元也がそれぞれ担当。
上州無宿紋次郎は、日野宿の貸元、井筒屋仙松殺害の罪で三宅島に流された。紋次郎は日野宿にある兄弟分の左文治の家に滞在していたのだが、ある日、紋次郎が心秘かに思いを寄せていたお夕が、井筒屋仙松に手ごめにされそうになり、左文治が斬殺してしまった。紋次郎は、左文治が、病床の母を思い嘆くのを聞き、死水をとるまでと、身替りに自首することにしたのである。島の生活は苦しく、悲惨であった。飢えをしのぐ道は、島民の情にすがり仕事を与えて貰うだけだった。果てしない海に突き出た断崖の上の二本の蘇鉄。流人たちは、この蘇鉄に赤い花が咲くと御赦免船が来ると信じ、赦免花と呼び最後の夢を賭けていた。流人の中に、女郎あがりで、妊娠している、お夕という女かいた。男たちは誰ひとりとして寄りつこうとしなかったが、紋次郎は、日野のお夕への心の負担をやわらげろため、何くれとなく面倒をみてやるのだった。半年振りに、流人船が島に着いた。が、お夕への赦免状はなかった。最後の夢を打ち砕かれたお夕は、断崖の上から身を投げた。新入りの流人亀蔵は、意外な事を紋次郎に告げた。左文治の母は、数力月前にすでに死亡しているというのだ。紋次郎は、以前から島抜けを計画していた拾吉、清五郎、源太、お花らの誘いを受けることにした。その夜、三宅島の火山が大噴火を起した。彼らは、船着場の船を奪う。五人は脱走に成功した。ところが、島抜けを成功させるには、秘密を知る人間が多すぎた。絡み合う源太とお花を、捨吉のドスが串刺しにする。睨み合う三人を乗せた船は、伊豆の浜辺に打ちあげられた。捨吉は清五郎にも斬りつけたが、紋次郎に叩き斬られる。ひん死の清五郎は、左文治に紋次郎殺害を依頼されていたことを告げ息をひきとった。紋次郎の表情には、虚無感か広がってゆく。襟に縫いつけてあった一分銭を元手に、長脇差と旅支度を整え日野へと急いだ。一方、紋次郎の島抜けを知った左文治は、一家の者たちを甲州街道に配し、紋次郎を待ち伏せした。紋次郎は、そのほとんどを斬り捨てると、左文治一家に乗り込む。左文治は、紋次郎の目に殺気を見た。そして、全ての筋書がお夕の書いたものであると白状した。かたわらには、赤ん坊を抱いたお夕が、恐怖におののき立っている。左文治が長脇差を抜こうとしたのと、紋次郎の長脇差が左文治の胸に突き立てられたのは、ほとんど同時であった。お夕が悲鳴をあげて左文治の身に取りすがった。三日後、紋次郎の姿は中仙道熊谷の北にあった。歩きながら紋次郎は楊枝をくわえた口の隙間からヒューと木枯しに似た音を鳴らした。紋次郎の目に浮ぶのは三宅島から見た海と、女流人のお夕の姿であった。
木枯し紋次郎
清五郎
拾吉
源太
お花
お夕
左文治
佐吉
半五郎
たみ
井筒屋仙松
丈八
寅吉
島役人
村役
流人の男
芋泥棒
クス
役人
役人
千乗
流人頭
亀蔵
長三郎
乾分
三ン下
ナレーター
監督、脚本
脚本
原作
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
助監督
助監督
助監督
企画
企画
スチール
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