白川和子
牧村泰子
泰子の夫、潤一が海外勤務を終えて帰国する日が近ずいていた。泰子は、若く、うれた体を、義母ミサオと義弟卓次の世話にまぎらわし、体のうずきをこらえていた。そんな泰子に以前から好意をもっていた卓次は泰子への好意が愛に変っていくのをどうすることもできなかった。帰国した潤一に毎夜、泰子は欲情をぶつけたが、潤一は泰子を満足させてくれなかった。ある日、夫の忘れ物の中から、女の下着を発見した。夫に女がいると思い、潤一を尾行する。あるホテルの前で見たのは、夫の女ではなく、女に変装した夫の姿であった。愕然とした泰子の傍に貞次が現われた。貞次は泰子を車に乗せ海へと走らせた。ボートに乗った二人が激しく抱きあったのは、卓次のあこがれと泰子の夫への不信と、満されぬ欲求からであった。泰子は彼に抱かれる日々が続く。潤一は泰子と卓次のことを知り、許すかわりにと、ある異常なパーティへ連れて行く。そのパーティは、サド・マゾ・ホモ・レズと正常なセックスにあきた連中の集りであった。その雰囲気にのまれた泰子は、夫の友人沼田に抱かれ、快感の波にのまれこまれていった。卓次は、泰子と逢うたびに泰子のセックスが変っていくことを敏感に嗅ぎとっていた。貞次は、女友達、育子の嫉妬から泰子の秘密を知らされる。半信半疑で育子に案内されるまま沼田家の一室で見た泰子の狂態に貞次は慄然とし、その場をとび出し狂ったように車を走らせるのだった。泰子が卓次の死を知ったのは、それからすぐだった。泰子は、潤一の束縛と、自分の狂ったセックスからはい出すために、そして、卓次への償いのためにと一人いずこともなく去っていった。
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