山本富士子
夏子
泉鏡花の「三枚続」を、「歌行燈」の衣笠貞之助で脚色・監督した悲恋もの。撮影は「弾痕街の友情」の渡辺公夫。
明治三十年、東京--深川の材木問屋の娘・勝山夏子が明石病院にかつぎこまれた。怪我をさせたのは両国のどじょう屋の板前・杉本愛吉で、酔ってふりまわした一升ビンが夏子の足にあたったのだ。夏子の手当をしたのは山ノ井光起という若い医師、彼には華族の娘貞子という婚約者がいた。いつしか光起と夏子は恋しあうようになった。光起の仕事を理解するため、夏子はドイツ語塾に通った。が、そこで身分が違うといじめられた。これを知った愛吉は塾に怒鳴りこんだ。それが原因で夏子はお出入り禁止、光起との交際も禁じられた。しょげる夏子をみる愛吉は、自分の彼女に対する愛を知った。深川の大火で夏子の家は丸焼けになった。病身の父と借財のため、夏子は光起をあきらめる決心をした。歳月は流れた--芸者になった夏子は小夏と名のり下田に流れていた。彼女を慕う愛吉は、近所の“河伝”に住みこんでいた。金でなびかぬ小夏に“河伝”の親爺が熱を上げ、刃傷沙汰を起し、止めに入った愛吉はクビになった。夏子は小田原に住みかえ、愛吉も後を追った。一日、愛吉の真情を知った夏子は、彼を箱根に誘った。一方、貞子との結婚に失敗した光起は悶悶の日を送っていた。たまたま熱海に行った光起は、夏子の消息を知り料亭相模屋で二人は再会した。その席へ出刃を持った愛吉がとびこんできた。彼は光起の気持を誤解したらしく、いきなり彼に切りかかった。それを止めようとして仲に入った夏子の脇腹にささってしまった。明日は二人で箱根に行くという前夜、愛吉に手をとられながら夏子は寂しく息絶えた。
夏子
愛吉
光起
国俊
加茂川亘
才子
貞子
宗盛
おゆき
彦蔵
伝六
おかつ
雁次
善兵衛
重助
なみ
おその
栗栖
中村
お八重
君子
令嬢
おせん
お玉
お杉
おはつ
お咲
のり子
太っちょ
馭者
鰻屋の親爺
芳造
おきん
富子
浜奴
かの子
[c]キネマ旬報社