小林勝彦
中乗り新三
「唄は峠を越えて」の犬塚稔の脚本を、「妖花伝」の加戸敏が監督した歌謡股旅もの。撮影は「晴小袖」の武田千吉郎。
佐吉は伊那谷の清兵衛親分に喧嘩の助勢人に頼まれ、木曽路を急いでいた。突然、中乗り新三と名のるやくざに呼び止められた。新三は、佐吉が川へ投げこんだ女衒から三両もらい意趣返しを請けあって待ち伏せていたのだった。渡り合ったが新三は傾斜をすべり落ちた。佐吉は、新三と一緒に落ちた自分の笠と合羽の代りに、新三のものを身につけて去っていった。はい上った新三は、佐吉を追って飯田街道に入るが、とある茶店で、旅商人与佐平に出会った。彼は連れの娘をむりやり新三に押しつけた。娘はお美代といい、伊那に住む従姉のところへ一人旅。新三はお美代を道づれに旅を急ぐ。やくざ三人が突如斬りつけてきた。新三の顔を見て人違いだと言った。彼らは鵜沼の鉄五郎の身内で、佐吉を狙っていたのだ。その夜、新三の男らしさに参ったお美代は、積極的に新三に迫った。新三は逃げ出し、居酒屋でテレかくしの酒を飲んだ。そこへ清兵衛一家の三下が助勢人集めにやってきて新三を雇う。オシのふりをしたまま新三は清兵衛の家に上りこんだが佐吉の姿は見当らなかった。明日は喧嘩という日に佐吉はようやくやってきた。いよいよ当日、佐吉との対決の場に急ごうとした新三の前に、お美代がとび出してきた。彼女を訪ねてきた菊屋のお仙が、鉄五郎たちにさらわれるというご注進だ。新三は子分どもを叩きふせて恩願寺へ急いだ。清兵衛一家でこわいのは新三と佐吉とにらんだ鉄五郎は、喧嘩場にいかず恩願寺へやってきた。新三と佐吉は今日こそはと斬り結んでいたが、鉄五郎たちのドスも払わねばならず、面倒な乱闘となった。そこへ、通りかかった新三と旧知の飛脚三平が通りかかり、清兵衛一家に注進。清兵衛たちは逸散に恩願寺へ駈けつけた。新三のはたらきは目ざましい。乱闘はたちまちのうちに勝負がついたのであった。
中乗り新三
宵宮の佐吉
飛脚参平
お美代
お国
お町
お仙
土門覚十郎
与佐平
女衒久六
伊沼の伝造
金田の根吉
唐戸の三蔵
伊那谷の清兵衛
鵜沼の鉄五郎
客引き与四郎
百舌の音八
奈川の七五郎
衣下の丑五郎
番頭喜平
かん酒屋の親爺
七瀬の当六
伊田の駒七
忍の三八
老女おさと
老女お歌
老女おちか
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