森繁久彌
今野東吾
今東光の週刊新潮連載の「河内風土記」の映画化で風俗喜劇。椎名竜治が脚色、「地の涯に生きるもの」の久松静児が監督、撮影も同じく遠藤精一。パースペクタ立体音響。
小説書きの東吾和尚のところには、河内の野に住むおひとよし達の身の上相談が、次々に持こまれる。ケチで金をためた“豚の毛はん”と、寄せ屋の親方は、生花の師匠のお色気で、見事にも五十万をまき上げられる。後家の文栄は、行商人の三次郎に、コロリとだまされ、翌日から一銭ももらえないひどい生活。東吾和尚の智恵で、三次郎の商売物の洋服、反物一切を質に入れて、あざやかなしかえし。ある夜、天台院にはいったコソ泥がある。東京からキャバレーの女と駆け落ちした和太郎という男。東吾和尚らにとっつかまると、居直っての金の無心。和尚に一喝されてシュンとなるが、人の好さそうなところを見こまれて、寄せ屋の親方のところに世話してもらう。寄せ屋の一人娘明子は、和太郎に好意を持った。いくらかうすのろの八百屋の勝造は、口をきいたこともない仲居お三に一目惚れ。脅迫により仲人をたのまれた伊之助親分は、ぶ男の勝造に代り、ちょっと不良がかった定助を、見合の席にピンチヒッター。ひともめあったが、ちゃっかりと定助、お三は夫婦約束をすることになる。賭場に入りびたりの亭主パア太に愛想づかしのお久仁は、子供と生活のため、週三千円の契約で、数人の男の周り持ち女房。それをめぐってのドタバタの一幕。伊之助親分の工場に勤める、片目の不自由な貞子は、かつてひどい夫に苦しめられた身の上だ。ふと知り合ったストリップ劇場のペット吹き荻野と思い想われる。荻野もかつて女に裏切られた苦い思い出がある。荻野は貞子が処女でないことを知ってまたひともめするが、それもめでたくおさまって、河内の野は、東吾和尚を中心に愛すべき人たちの集まりである。
今野東吾
浅吉親分
伊之助親分
豚の毛はん
松つぁん(チンバの便利屋)
勝造(八百屋の倅)
萩野(テント劇場のラッパ吹き)
寄せ屋の親方
定助(ブローカー)
米吉(ブローカー)
周さん(古靴屋)
三次郎(呉服行商人)
和太郎
彦助(パア太とお久仁の子供)
須藤(薫の男弟子)
拾い屋A
拾い屋B
散髪屋のおやじ
パア太(魚屋お久仁の亭主)
七公(米吉の弟分)
万太郎(米吉の友人)
小男(産婆おりんの情人)
貞子(ブラシ工、片眼)
おりん(産婆)
文栄(後家、女工後に三次郎の妻)
薫(生花師匠と称する女)
明子(寄せ屋の娘)
お久仁(パア太の女房)
お三(仲居)
おます(豚の毛はんの妻)
東吾の奥さん
貞子の母
饅頭屋のおばはん
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