丹羽又三郎
宇奈月兵庫
角田喜久雄の原作を、「紅蜥蜴」の吉田哲郎が脚色し、「気まぐれ鴉(1960)」の加戸敏が監督したサスペンス時代劇。撮影も「気まぐれ鴉(1960)」の竹村康和が担当。
夜半、同時刻に江戸月の輪天神の境内桔梗堂に集った二人の女が行方を絶った。お光と、中臈お浦の方である。お浦の侍女秋絵の言葉から、身分も住居も全く異なる二人が、お互いに何の連絡もなく、同じ時刻、同じ場所に集ったことが分った。お光は遠山金四郎によって拾われ養育を受けていたのだが、金四郎の配下宇奈月兵庫の許婚となっていた。金四郎は兵庫に命じて行方を探索させた。兵庫は桔梗堂を調べていると、お兼と数人の黒覆面に取りかこまれ、事件から手を引くよう脅かされた。疑問を持った兵庫は、桔梗堂の持主である乞食の許を訪れた。既に熊五郎という男が先回りしていた。乞食はどこからか射たれた矢によって死に、熊五郎は姿を消した。現場には櫛が落ちていた。--お光、お浦の二人は桔梗屋敷の地下牢に押しこめられていた。お兼は、二人の体には取りつぶされた桔梗屋の財宝のありかを示す秘密が隠されてあり、二人は幼い時に別れた姉妹であると言った。お光が折かんされるのを見たお浦は、身につけていた守り袋をお兼に渡した。謎めいた和歌の下の句だけが記されてあった。上の句があると思われるお光の守り袋は、兵庫にあずけてあった。お光はお兼に責められ、偽って兵庫の許に帰り守り袋を盗んだ。お光は桔梗屋敷に帰り守り袋を渡そうとしたが、一瞬とびだした熊五郎が彼女をさらったが、守り袋はお兼の手に残った。中には何も記されていない。お兼らは、短銃で熊五郎を捕えた。懐から出た般若の面には上の句が記されてあった。熊五郎はスキをみて逃げた。お光の書きおきで大榎の屋敷をさがしていた兵庫はそれが老中青山上野守の屋敷と知って驚いた。上野守は、桔梗屋の主を殺し、莫大な遺産を狙ってお兼らを使っていたのだ。財産は桔梗屋敷に隠されていることが分った。悪人一味は屋敷に急ぐが--。
宇奈月兵庫
熊五郎
遠山左衛門尉
お光
お浦
秋絵
お兼
江川の局
お妻
湯島の乞食
取次の侍
遠州の留三
志波半九郎
青山上野守
黒装束(甲)
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