若尾文子
桐原里子
水上勉原作の同名小説を、「新人生劇場」の舟橋和郎と「女は二度生まれる」の川島雄三が共同で脚色。川島が監督した推理もの。撮影もコンビの村井博。
洛北は衣笠山の麓、灯全寺派の孤峯庵は京都画壇の重鎮岸本南嶽の雁の襖絵で名高く、雁の寺ともよばれていた。ある日、喪服姿の桐原里子が山門を潜った。南嶽の妾だが、彼の死後、遺言により孤峯庵の住職慈海を訪れたのである。慈海は里子のやわ肌に戒律を忘れた。そのまま慈海の世話をうける身となった里子の眼にとまったのは、小坊主慈念だった。若狭の貧しい寺大工の倅として育った慈念は、口べらしのためこの寺に預けられ、宗門の中学校へ通っていた。同じく貧しい家庭に生れた里子は、いつしか慈念に同情をよせるようになった。ある夜、狂おしげにいどみかかる慈海との情事に耽溺していた里子は、障子に人影の走るのを見た。慈念に覗かれていると知って、里子は愕然とした。勉強がきらいな慈念の無断欠席をする日が多くなった。宇田先生からそれを聞いた慈海は慈念を叱った。里子が庇うと、慈海は同情は禁物だといった。若狭西安寺の住職から慈念の生い立ちを聞いた里子は、身をもって慰めようと彼の部屋に忍び入り、惜しげもなく体を与えた。翌朝、慟哭する慈念の瞳が、何事かを決するように妖しく光った。夜更けに酩酊して帰った慈海は、何者かに襲われてばったり倒れた。その夜明け壇家の平吉が兄の葬式を頼みに駆け込んだ。里子は慈念を碁仇の源光寺に走らせたが、慈海はいない。源光寺の雪州は慈念の宰配で葬儀を出してやった。慈念は里子に和尚は雲水に出たらしいと告げた。棺桶の重さに不審を抱いた入人も、慈念の態度に気圧されたかたらで葬式は終った。慈海の失踪を知った本山では、宇田竺道を孤峯庵に入れることにきめた。慈念も里子も慈海のいない寺にいることはできず、身の回りを整理して寺を出ようとした。「和尚のいるところへ旅します」という慈念の言葉に、ハッとなった里子は方丈に駆け入った。南嶽の描いた子雁に餌を与える母雁の襖絵が、無残にも剥ぎとられていた。里子にはおぼろげながら、慈海が殺されたことが判った。
桐原里子
宇田竺道
堀之内慈念
北見慈海
雪州
岸本南嶽
桐原たつ
おかん
岸本秀子
独石
桐原伊三郎
喜七
木田黙堂
堀之内捨吉
徳全
助三
久間平吉
兄平三郎
監督、脚色
原作
製作
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
企画
企画
スチル
脚色
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