桑野みゆき
水方亜紀
朝日放送から放送された呉羽紡績のホーム・ソングから、「千客万来」の柳井隆雄と「金の実る樹に恋が咲く」の津久田一正が共同で脚本を執筆、「喜劇 団地親分」の市村泰一が監督したメロドラマ。撮影は「三味線とオートバイ」の小杉正雄。
沖縄で生れた亜紀は母と早くに死別し、内地にいるという父を瞼に明るく暮らしていた。亜紀の父三谷弘太郎は、戦争中沖縄守備隊の将校で亜紀の母と恋仲であった。弘太郎が内地の部隊に転属になる時、すでに母は亜紀を妊っていたのだ。友人の知子から三谷が父だと知らされた亜紀は、歌手を志し彼を頼って上京した。だが東京での三谷の幸福な家庭をみて自活を決心し、友人咲子のアパートに落着いた。亜紀はレストランで働き始めたが、そんな彼女のためを思った咲子は、三谷に亜紀が来ていることを知らせた。三谷は亜紀が娘であることをかくして、家へひきとった。三谷の紹介で亜紀は作曲家石津のもとにレッスンに通い始めた。そこで彼女は作曲家志望の西圭介と知り合った。圭介は、亜紀の母が遺した詩“川は流れる”を作曲して、新人歌手発表会で亜紀をデビューさせようとした。圭介をひそかに愛していた三谷の娘理江は二人を嫉妬し亜紀に冷たくあたった。そんなことがあって亜紀は無断で三谷の家を出た。だが、優しくしてくれる三谷夫妻にすまなくなった亜紀は三谷の家に帰っていった。三谷と亜紀のことを知った妻は、やさしく亜紀を迎えるのだったが、ジャズ喫茶で歌っている義妹の理江は、恋人を奪われた仕返しに亜紀の歌をとってやると言いはった。いつしか姉らしい労りの気持を持つようになった亜紀は、新作の歌も圭介も理江にゆずる決心をし、理江に置手紙を残して沖縄に帰って行った。姉の手紙で全てを知った理江は自分のしたことを悔いた。姉の代りに発表会で“川は流れる”を歌う理江は大喝采をうけた。やがて圭介は、亜紀を迎えに沖縄を訪れた。圭介から理江の心を聞かされた亜紀は、ようやく訪れた幸せに涙ぐむのだった。
水方亜紀
三谷理江
三谷弘太郎
三谷多佳子
酉圭介
石田克巳
小池咲子
石津謙作
石津邦子
高田
高田知子
秋枝
靴屋の店員
[c]キネマ旬報社