三益愛子
三島ふじ
「川は流れる」の柳井隆雄、それに石田守良と今井金次郎が加わって共同で脚本を執筆、「川は流れる」の市村泰一が監督したメロドラマ。撮影もコンビの小杉正雄。
八十八夜--お茶どころ静岡では新茶摘みにもっとも忙しい季節である。茶園の老舗三島家では、日本橋の店を継いだ長女の正子と婿養子の良介が手伝いに来ていた。大学を卒業した末娘の京子も母のふじに呼び戻されていた。ふじには彼女が女手一つで育ててきた五人の子供があった。長女は家を離れ、次女の高子はすでに嫁ぎ、三女の美子は絵の勉強のためフランスへ行っていた。しかも、長男の欣平は新劇に関係し、たまにしか家によりつかない状態だったので、ふじは美子の帰国を待って真面目な番頭石川と結婚させて三島家を継がせようと決心していた。京子には阿部という恋人がいるが薄給のうえ、肺を患っているため、収入の多いスチュワーデスの道を選んでいた。日本橋の店の正子は、男まさりの気性から株に手を出して失敗、店を抵当に借金の整理をしようとしていたが、ふじは家に伝わる骨董類を売って正子を助けてやるのだった。次女の高子は建築家の安東と結婚しているが、女性関係のことから夫との離婚を宣言して家出してきた。これはふじのウィットある計らいで解決をみた。三島家の人間にとってふじは一家の柱であった。京子が、パリ路線を往復するようになってから何カ月も経った。その間、恋人の阿部はサナトリュームに入っていたが、病状は悪化するばかりだった。それでも阿部は本を読んでいた。とうとう、京子がパリへ飛んでいる途中で、阿部は死んでしまった。この時ばかりは、ふじも京子と一緒になって泣いてやるより手がなかった。また、八十八夜がやって来た。そして突然美子が帰って来た。美子はフランス人と結婚していた。ふじは悩み、仲々結婚を認めなかったが、娘がそれで幸福になるのならと、思い返し二人を祝福してやるのだった。そこへ欣平が、同棲している劇団員の柏木みどりに子供が出来てしまったと報告に来た。「休む暇もありません。でも、私はすっかり年をとりましたよ……」その夜、ふじは一人で、八十八夜の月に語りかけるのだった。
三島ふじ
三島正子
三島良介
三島美子
三島欣平
三島京子
三島明
石川
安東高子
安東和也
安東春夫
安東夏子
阿部恵三
沢本みき
ミシェル
柏木みどり
三島家の女中
茶摘み歌の唄い手
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