石原裕次郎
武井一郎
「ひとり旅」の山崎厳と江崎実生が共同で脚本を執筆、「霧の夜の男」の松尾昭典が監督した台湾ロケのアクションもの。撮影は「星の瞳をもつ男」の岩佐一泉。
一九五八年秋、台湾海峡を行く貨物船の甲板で船医の武井一郎は遥か金門の島影をじっと眺めていた……早いものだ、日本を出てからもう三年、あのとき、俺は東京の病院で朝鮮戦線から送られて来た負傷兵たちの手当てに没頭していた。中国服を着た彼女は許婚者の王雄世を尋ねて台北から来たのだった。王がすでに逝ったことを知って失神した彼女の手当をするとすぐ、俺は次の手術に走った。しかし、その手術は誤診から麻酔で患者を殺してしまった。その夜、病院を辞めた俺は雨の舗道をよろめくように歩いていた彼女を救った。彼女は楊麗春といった。傷心の彼女に俺は必死になって生きる力を与えた。そして、彼女は俺が贈った一粒の真珠をしっかり握って、台北へ帰って行った……金門島に上陸した武井を友人の記者松阪が迎えた。そのとき、中共の砲撃が始まり、不気味なサイレンと低い地響きのする街をひとりの女性が通り過ぎた。「……麗春!」彼女は弟と共に雄世の父、哲文に引きとられていたのだった。「私、毎日力一杯生きています……みんな、あなたのお陰です」じっと瞶め合う二人の胸に懐しさがこみ上げて来た。しかし、哲文は麗春が双十節の日、劉上尉と結婚式を挙げることを伝えた。中共の金門島砲撃が激しさを加えてきた。「私、あなたと一緒に日本へ行きたい」激情のまま胸に飛び込む麗春の手を離し、武井はそっと姿を消した。ホテルには、松阪と日本からはるばる訪ねて来たかおるが待っていた。すべてを捨てて来たかおるに武井の言葉は冷たかった。双十節--広場は華々しいマーチとパレードが展開され、群衆の歓声と祝砲が怒涛のように流れていた。婚礼衣裳の麗春の許へ武井の贈物が届けられた。“船が急に出航することになり、二度と会えないかも知れないがお幸せに……”麗春は街へ飛び出して行った。高雄からの輸送船団が金門島に近づくころ、再び砲撃が始まり武井、松阪の上陸艇が至近弾を受けて沈んだ。傷ついた松阪をかばいながら武井は砲弾の中を岸に向かって泳いだ……そして、金門島の岩礁地帯にたどりついたとき、松阪はすでに息絶えていた。そのとき、砲声と黒煙の中に武井を呼ぶ声があった。「麗春!」岩から岩へ……波打ち際をを……駆け寄る二人に至近弾が炸裂した。武井に抱えられた麗春は「……こんどお会いするときは戦争のないところで……」といって静かに息絶えた。「やめろ!やめないか!」武井の姿が黒煙と焔の中に消えて、ただ絶叫だけが残るのだった。
武井一郎
楊(ヤン)麗春
高木かおる
松阪和男
王美蘭
王哲文
劉上尉
王小栄
張
頼
陳
病院長
主任教授
新聞記者一
新聞記者二
新聞記者三
中国人ボーイ
台北空港事務員
竜山寺の老婆
漁民A
漁民B
漁民C
漁師A
漁師B
中山堂ボーイ
中国人記者A
中国人記者B
中国人記者C
中国人記者D
海軍憲兵
海軍連絡官
警察官
東方大飯店支配人
代議士A
代議士B
幹事長の娘
タクシーの運転手
台湾大学看護婦
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