宇津井健
城戸明
江戸川乱歩賞を獲得した佐賀潜原作「華やかな死体」より「御身」の石松愛弘が脚色、「女の一生(1962)」の増村保造が監督したスリラーもの。撮影はコンビの中川芳久。
或る夜、富士山食品の社長柿本高信は自宅の応接間で殺害された。家族は後妻みゆきと、舞台演出家の富美夫という息子だけだった。現場に立合った千葉地検の若い検事城戸は、次席検事の鳴海から、必ず有罪の判決を取るよう命じられ、成功すれば東京への栄転をほのめかされた。まず、社長秘書の片岡綾子が調べられた。綾子は社長の愛人であり、犯人は人見十郎で後妻のみゆきと共謀した上の殺害だという。次に調べた中野経理部長の証言から城戸は、柿本社長が二、三千万円の浮貸しをやっていたことを知った。有力な容疑者である深町商事の営業部長人見十郎は、津田部長の探りから、兇器である青銅の壷についていた指紋と一致したことが判明され、直ちに拘引された。人見は富士山食品を馘にされた男で、みゆきとは待合でしばしば逢引きしていたとの情報もあった。人見は事件当夜のアリバイを主張したが、それもすぐ嘘とバレてしまった。しかし、人見は頑強に犯行を否定していた。やがて人見には山室という老巧の弁護士がついた。山室は、深町商事が浮貸しをかくすためにやとったのだ。山室はみゆきと人見が逢引きした料亭に出かけ、融資を種に何事かを囁いた。綾子には一千万円の通帳をみせ、そして柿本社長の弟には借金の五百万円の肩代りを種に……。公判の日がやって来た。証人のほとんどが、調査と違った証言をはじめた。頼りの証人綾子までが反対の証言をした。人見は無罪になった。城戸は青森地検に左遷と決まった。城戸はその最後の日まで、津田と目撃者の線を洗った。その最後の日、ついに二人は人見が血だらけの姿で、柿本家の庭から逃げだしたという証人を見つけだした。そこへ綾子も飛びこんで来た。偽証罪であげてくれというのであった。だが、事件はすでに城戸の手を離れていた。先輩の草間検事が山室、人見を絶対に追いつめると約束した。城戸は津田の見送りをうけて淋しく発っていくのだった。
城戸明
片岡綾子
人見十郎
草間検事
柿本みゆき
山室竜平
鳴海検事
中里常子
津田進作
息子富美夫
大庭検事正
深町源造
中野亘
峯島たつ
望月ハナ
柿本源太郎
須藤警部補
瀬川刑事
江崎裁判長
雨宮事務官
寺山雄吉
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