岩下志麻
村井桃子
由起しげ子原作“罰と愛より”「愛と悲しみと」を監督した大庭秀雄と「川は流れる」の柳井隆雄が共同で脚色、大庭秀雄が監督したメロドラマ。撮影は「秋刀魚の味」の原田雄春。
村井桃子は画壇の重鎮である津田逸作について絵の勉強をしていたが、津田の桃子に寄せる愛情には、彼女の亡母から続いている強い感情があった。しかし、桃子には結婚を約束した建築家の時中弘がいた。二人の結婚の承諾を得るために津田のアトリエを訪れた桃子は、津田の激しい感情に抗しきれず純潔を失ってしまった。そのために桃子は余儀なく時中を突放し、傷心の身を伊豆へ運んだが、そんな彼女を救ったのは実業家の平間であった。彼の磊落で恬淡とした態度に魅かれた桃子は、すべてをなげうって平間の胸に抱かれた。家庭のある平間は彼女の心も生活も束縛はしなかったが、彼に抱く感情が果して何であるか、桃子は悩んだ。再び絵筆を握るようになった桃子に、時中の結婚が伝えられた。相手が会社の同僚で男関係の多い弥生と知って、桃子は一度の汚れから身を退いた自分の真心があまりにもむなしかった。以前にも増して、絵に情熱を傾けはじめた桃子に、津田の弟子、八杉はひたむきな愛情を寄せた。桃子のすべてを承知しながら底知れない善意を持って接する八杉は、彼女の絵が入選した日、愛を告白した。ところが桃子は八杉との再出発を決意したとき、時中とめぐり逢う破目になった。彼は不正事件のために飛騨へ左遷される直前で、折も折、遊び歩いていた弥生が自動車事故で死亡したという知らせがあった。桃子の心は打ちひしがれた時中を見て動揺した。それはやがて一つの決意に変っていた。桃子は、心の中にあったものが、津田でも平岡でも八杉でもなく、ただその人ひとりの上につながるものであったことを知ったのである。
村井桃子
時中弘
津田逸作
平間昇介
八杉静一
兄一郎
祖母千代
赤木弥生
北川仲江
縫目正志
立石早苗
時中の父
時中の母
交換手A
飛騨の道の女
桃子の下宿の小母さん
土地の業者A
大橋
歌手
[c]キネマ旬報社