三國連太郎
富嶋松五郎
岩下俊作原作“富嶋松五郎伝”の映画化で、過去において坂東妻三郎、三船敏郎で映画化され今回で三度目の映画化である。「この首一万石」の伊藤大輔が脚色、「東京アンタッチャブル 脱走」の村山新治が監督した人情ドラマ。撮影は「安来ぶし道中」の飯村正彦。
明治末期の九州小倉の町。芝居小屋常盤座が土建業者結城組の手に渡り、それまで車曳きに限り木戸御免だった習慣を切ったため、松五郎と由松が結城組の間に大乱闘をひきおこし、巳之吉と清次は組を追放され、松五郎も小倉を追放された。ある晩、その松五郎がケガをして宇和島屋に帰ってきた。翌朝、宿の女将豊のすすめで小倉を立退こうとした松五郎は、ケガをした吉岡家の一人息子敏雄を救ったことから、吉岡軍医を知りその縁で吉岡屋敷への出入りが始った。小倉警察の新署長新見と吉岡は中学時代からの親友であったため、松五郎の小倉追放は解消された。しかも松五郎の喧嘩相手が、吉岡の剣道師範大木戸と知って、その因縁に松五郎は驚いた。吉岡は、松五郎の男らしく素朴で純心な態度に心を惹かれ、人一倍弱虫な敏雄の教育を松五郎に頼んだ。菖蒲の節句の日、吉岡は肺炎をこじらせて死んだ。母子は屋敷を出て寺の離れに移っていった。松五郎は、陰に陽に敏雄の世話をやき、良子のよき相談相手となった。十年の月日が流れていった。敏雄は中学から熊本の医大へすすんだ。祇園祭りの日、敏雄は祭礼の研究をしている吉田教授を連れて帰省してきた。久し振りで良子に会い敏雄の帰りを待つ松五郎であったが、母と松五郎に対する敏雄の言葉は冷たかった。敏雄は世間の噂を二人に伝え、松五郎に出入りを止めるように言い切った。松五郎のうけた心の痛手は大きかった。祭りの日、吉田のために本式の祇園太鼓を打つ松五郎の顔は、汗ならぬ涙で濡れていた。その夜、松五郎は昔の喧嘩相手、巳之吉と清次の襲撃をうけた。松五郎はピストルで打たれたが一命をとりとめた。夏、秋が過ぎたある日、良子の許に松五郎が現われた。松五郎は良子を愛していたことを打明け、十年間敏雄の教育にかこつけて出入りしていたことをわび、雪の中へ出て行った。その晩松五郎は雪の中に死んでいった。胸を病んでいたのである。無知で粗暴だが、正義感が強く純粋な心を持った松五郎に良子もいつしか惹かれる心を持っていた。良子は呆然とその知らせを聞くのであった。
富嶋松五郎
吉岡良子
吉岡直樹
吉岡敏雄
豊
由松
巳之吉
虎鮫
駱駝の馬
新見署長
斎田
小野
大木戸兵衛
結城豊蔵
女教師
清次
藤太
済生館
佐分
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