内田良平
中井辰五郎
紙屋五平の原作を「残月大川流し」の加藤泰と鈴木則文が共同で脚色、「風の武士」の加藤泰が監督した仁侠もの。撮影は「人斬り笠」の川崎新太郎。
明治も末期の頃。車屋の辰五郎は東京で事件を起し、新盛り場大阪へと流れて来た。大阪駅前は西村組が取り仕切る縄張りだが、一匹狼の辰五郎はその縄張りを歯牙にもかけず、持前の気ッ風とゴム輪の人力車で人気を呼び、車辰として異名をたかめていた。そんな折も折、西村組の親分弥三郎が思いをかける芸妓喜美奴が辰五郎の車にのった。お互い鼻ッ柱の強い二人のこと、一寸した言葉の行き違いから辰五郎は、喜美奴を川の中へ放りこんでしまった。赤い蹴出し散らつかせながら落ちて行く喜美奴を見た瞬間、辰五郎は彼女に惚れこんでしまった。日頃の恨みもあって、西村組は辰五郎を弥三郎の前に連れていった。このオトシマエはと詰寄る西村組の前で、辰五郎は喜美奴に惚れた事を話し、自分の身柄は西村組でどう処分しても構わないと度胸をみせるのだった。弥三郎はそんな辰五郎に一目惚れ、二人の仲人をかって出た。しかし、弥三郎が喜美奴に惚れていると知った辰五郎は、彼女との結婚を断ってしまった。辰五郎の心意気を知った弥三郎は、喜美奴の妹分、玉竜を囲うと言いだし、二人の結婚を迫った。だが、辰五郎の弟分を任ずる銀二郎と玉竜はできた仲だ。何も知らない辰五郎と喜美奴は結婚する事になった。その最中弥三郎は警察にあげられた。弥三郎の義兄半田弥太郎との柔術試合に敗れた矢島に禁制のダイナマイト漁を密告されたのだ。矢島は弥三郎の留守を狙って縄張を拡げていった。辰五郎は弥三郎の女房おとくを盛り立てて、必死の防戦を続けた。そんな頃に弥三郎が出所して来た。それを知った矢島は、弥三郎の暗殺を計った。だが、襲撃は矢敗に終わり、弥三郎の身代りとなって銀二郎が死んだ。泣き濡れる玉竜と喜美奴の姿を背に、辰五郎は矢島との決闘の場へ出かけて行くのだった。
中井辰五郎
喜美奴
栗原銀二郎
栗原梅乃
西川弥三郎
西川おとく
玉竜
六発の政
おんびきの巳之
ダイナマイトの鉄
パッチの正ぼん
横光忠次郎
光川弥太郎
矢島竜雲
オケラの吉蔵
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