西村晃
麻見弘
樹下太郎の同名小説を「にっぽん実話時代」の松木ひろしと藤田傅が共同で脚色「警視庁物語 十代の足どり」の佐藤肇が監督したスリラーコメディ。撮影は「悪女」の西川庄衛。
小柄な麻見に対して、妻のすぎ江は大型な豊満な女性であった。一年ごとに貫禄を示してゆくすぎ江は、タクシー運転手の夫の留守に、医師の山越、初老の北村、ハリキリボーイの小倉と、浮気心を満足させていた。喧嘩の絶えない夫婦が思いついたのは、すぎ江が恋の清算をして、自殺という仕掛けで、麻見がその死体入りの棺桶をかつぎ廻り、山越や北村をゆすって歩こうということであった。小心者の北村は五百万円、山越もまた札束を積むかにみえたが、彼こそこの狂言の作者で、すぎ江を口説いて、人のいい麻見を利用したのだった。山越はすぎ江から五百万円受けとると、すぎ江をも毒殺しようとしていた。一切を知った麻見は、山越の仮面を剥がし、山越は自ら毒を仰いで死んだ。死体の処理をすますと、アパートに帰ったすぎ江は、麻見の内ポケットにある五百万円の札束をみつけると、睡眠薬で麻見を眠らせ、五百万円を持って小倉のもとに走った。だが包みの中から出て来たのは、すぎ江の死亡通知書であった。息せききって帰って来たすぎ江は、麻見と、五百万円をめぐって争った。二百五十万円を喧嘩の末とったすぎ江は、麻見を憎悪し麻見はすぎ江を嘲笑した。夫婦の愛情は二人の間には、もうなかった。だが麻見はすぎ江の見事な身体に対する未練は強く残っていた。小倉のもとにゆくというすぎ江の言葉に逆上すると、麻見はすぎ江を殺した。早速霊柩車に乗せると、火葬場へと急いだ。だが運転手の毛利はすぎ江の変死を見破り、麻見をゆすった。一枚でも札は渡せない、麻見は毛利の油断をついて霊柩車を猛スピードで走らせた。巨木の真中に突進した霊柩車の破片の中を、五百万円の札束が舞いあがっていった。
麻見弘
麻見すぎ江
毛利三郎
山越堅児
北村由之助
小倉民夫
松田礼子
死体安置所の男
病院の守衛A
病院の守衛B
病院の事務員
看護婦
ホテルのフロント
運転手
女秘書
結婚式場の守衛
エレベーターガール
[c]キネマ旬報社