ハナ肇
左官熊五郎
山内久と「霧の旗(1965)」の山田洋次が共同でシナリオを執筆、山田洋次が監督した時代喜劇。撮影もコンビの高羽啓夫。
春。向島山谷堀の裏長屋の住人たちは、貧乏ゆえにかえって傍若無人に、人間の姿を赤裸々に見せる。住人は左官の熊五郎、相棒の八、因業金貸しのおかん婆、それにクズ屋の久六、按摩の梅喜、頑固でお人好の差配源兵衛。そして八の女房とめと、熊の妹ではきだめの鶴と言われるせい。そんな中で近江屋の若旦邦七三郎は道楽息子ながら、長屋では唯一のエリートだ。せいは美人をみこまれて五万石のお大名赤井御門守に見染められ、お妾奉公にあがるばかりになっていたが、熊が酔払って話をぶちこわしてしまった。だがせいは、長屋に肥汲みに来る吾助に思いを寄せ、二人はいつかくさい仲となった。やがて、秋も近くなった頃、近江屋の主人守兵衛は、源兵衛に長屋の店賃値上げを厳命する。しかし長屋の連中は馬耳東風と聞き流す始末。だが店賃値上げに失敗した源兵衛は、責任を追及されてお払箱になる様子。こんな時に黙っていては江戸っ子の名がすたると熊が一計を考え出し、家主の近江屋がひっくり返る大騒ぎとなった。遂に町方に召捕られた源兵衛と熊のいない間に、冬がやって来た。政治の腐敗、経済の窮乏が庶民の身に沁みる季節だ。熊が入牢して既に二カ月が過ぎた。おかん婆さんは寒さも加わって衰弱し、誰の目にも死期がせまっていた。必死になって貯めた金を冥土まで持ってゆこうと、病床のおかんは、心をわずらわした。一方、間男の子をはらんだ八の女房とめの出産が迫り、死と生が長屋のすべてを支配した。おかんが死んだ。これを機会に年内立ちのきを命じる近江屋の過酷さに、また熊は立ちあがった。そのうちとめが男の子を産んだ。再び春がめぐって来た。吾助とせいの晴れの婚礼の日、あいかわらずバクチですってんてんの熊と八が、いちかばちかの賭けに、春の日射しをうけて一攫千金を夢みていた。
左官熊五郎
相棒の八
おかん姿
せい
赤井御門守
クズ屋の久六
按摩の梅喜
差配の源兵衛
八の女房とめ
七三郎
ツケ馬の番頭
吾助
近江屋守兵衛
[c]キネマ旬報社