江波杏子
絵森夏江
「佐々木小次郎(1967)」の松浦健郎の原作を彼自身が脚色し、「今夜は踊ろう」の弓削太郎が監督した賭場もの。撮影は「妻二人」の宗川信夫。
六本木でピアノバーを経営している夏江の本職は、女賭博師だった。幼い頃から胴師の父源造から仕込まれた腕前は名人芸と言われている。その夏江の身を守るように松吉は、片時も彼女の傍を離れることはなかった。裏はやくざの親分で、表向きグローバル工業の社長である磯部はそんな夏江に、時をみては求婚していた。ある日、夏江は温泉町の賭場で、たてつづけに自分の手の中を読んだ女子学生滝子に会って茫然とした。滝子は公金横領を犯した恋人を助けるため賭場に来たのだが、結局、夏江に敗れ、恋人と自殺を計った。夏江は、素人をこの道に引き込むのは良くないと考えイカサマ札を使ったのだが、滝子が生き残ったと聞いた時はさすがに良心がとがめた。夏江は写真家である自分の恋人田上を売り出すため化粧品会社の砂橋宣伝部長に身体を提供するほど、田上を愛していた。しかし、磯部が滝子に温泉町でのイカサマを知らしたため滝子は田上に近づき、夏江と田上の間を裂いてしまった。そんなある日、磯部は全国の親分衆を集めて賭場を開帳し、それを警察に密告して、責任を大阪の菊田親分にかぶせた。勢力拡張が自的だった。この事件で、胴師をつとめた源造は自殺した。夏江は菊田に会い、密告者を質したところ磯部のたくらみが明るみに出た。そこで偶然会った滝子と夏江は、田上を賭けて花札を握ったが田上はやはり滝子と共に夏江から離れていった。一方、源造の仇と磯部を刺し殺した松吉も磯部の子分に殺され、夏江の生きがいは、いまは花札を握る時だけであった。
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