伊達正三郎
佐川忠彦
橘外男の「私は呪われている」を、石川義寛と藤島二郎が共同で脚色し、石川義寛が第一回作品として監督したお化け映画。「生首奉行と鬼大名」の河崎喜久三が撮影した。
山道に迷った忠彦と啓子は、ふと現れた猫を追って廃屋に辿りついた。啓子は井戸の水面に老婆の姿を見て恐れた。疲れきった啓子は発熱し、怪猫に変り果てた老婆に苦しめられた。啓子はお玉が池の猫の怨霊につかれ、その廃屋は惨事のあった代官屋敷の跡だったのである。話は百年前にさかのぼる。代官の横暴と酷しい年貢のため、一揆も起こりかねない世の中だった。名主南条新兵衛は百姓達の訴えを代官鬼沢刑部に伝え検地を願った。新兵衛の娘秋野を狙う刑部は、かねて邪魔者に思っていた新兵衛をお玉が池のほとりで惨殺した。猫の玉が異様に泣き、南条家から出火した。父の身の変事を知った秋野は逃げようとするところを、刑部に追いつめられ、咽喉をついて自害した。代官の弟五郎太は医者玄斎の娘小笹に目をつけたが、小笹は新兵衛の息子八干丸に夢中だった。我が家の焼跡に立った八千丸は、現れた玉の足元に、代官の紋所のある印篭を見ておどろいた。代官屋敷にのりこんだが、多勢に無勢、刑部らの手でお玉が池に沈められた。八千丸の血痕を玉がなめていた。数日を経て五郎太と小笹の婚礼があった。白い花嫁衣装に血がついたり、結納品の上に秋野の簪があったり、不吉なことが連続した。初夜、屋敷をとび出した小笹は焼跡にかけつけ、もの凄い形相で倒れ伏した。小笹は病床に伏した。ある日、枕許を走り抜けようとした蛇を掴み、食べ始めた。その手は毛だらけの猫の手だった。五郎太は茶屋に入りびたった。父玄斎の家に戻り、報復を誓うのは、もう怪猫の小笹だった。小笹が刑部の寝所に忍び込んだところへ、五郎太が逆上して現れた。兄弟の斬り合うさまを小笹は不気味な笑いを浮かべていつまでも見つめていた。
佐川忠彦
郡山啓子
僧禅和尚
白髪の老婆
南条新兵衛
娘秋野
鬼沢刑部
弟五郎太
医者玄斎
妻お梶
妾お蘭
油屋六右衛門
腰元加代
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