京マチ子
女(塩沢さや)
沢田撫松の原作から、「ぼんち」の和田夏十と市川崑が脚本を書き、「からっ風野郎」の増村保造が監督した喜劇で、今回は三度目の映画化。撮影は「犯罪6号地」の村井博。
東海道線上り特急列車「えこう」の中--大阪界わいでは、ちょっとした腕ききのスリ専門のデカ・北八平太は休暇で上京中だ。その隣に彼にぴたりとくっついて腰掛けているのが美人スリの塩沢さや。現行犯じゃなければ八平太には手も足も出ない。食堂車ではお偉い作家の五無康祐が、この世に美人のスリなんていやあしねえと、怪気焔をあげている。トンネルの中で停電した。車内は大さわぎ、腹の出た重役タイプの男が狙われた。休暇中とはいえデカとして黙ってはいられない。盗難品は名刺入れだけだった。さやも腕がにぶったか……。八平太は今度やる時は俺につかまるようにやれと説教した。が、彼女も可哀相な女だった。戦争中、父がスパイ嫌疑を受け厚木村を追い出され、遂には自殺した。天涯孤独な彼女は、お定まりの転落コースに落ちたというわけ。そこで稼ぎためた金で厚木に帰り、盛大に父の法事をやろうというのが彼女の狙いだった。センチで美人に弱い八平太の、ホロリとしたスキに彼の財布をさやがスった。さやは八平太をまいて姐さん株の築前春子のドヤに急いだ。が、そこで法事の金をスられたのに気がついた。列車の中で面倒をみてやった薄汚い婆さんの仕業だ。法事の金を作らねばならない。ひっかかったのは何と五無先生だった。彼女の身の上話に同情した先生、ポンと七万円現金で出した。彼女がズラかったのはいうまでもない。厚木は変った。さやは昔の奴らを探しに交番へ飛びこんだ。続いて八平太と五無先生が現われた。彼女は先生にアッサリと金を返した。先生は彼女を小説のネタにしようとタクラんだ。東海道線下り列車の中--八平太の心境は複雑だった。刑務所入りを望んで警視庁でタンカをきった。八平太にいかれたさやは、石けん箱一つ盗んで八平太に御用になった。このまま大阪に着けば八平太がさやの面倒をみるよりしようがない。デカ商売にもおさらばするよりしようがない。どうやら八平太の方がさやにまいったらしい。それにしても、さやの足は素晴らしい。
女(塩沢さや)
刑事(北八平太)
小説家(五無康祐)
女の弟分(野呂走)
女万引(築前春子)
雑誌記者(花輪次郎)
警視
重役
学生
列車ボーイ
からむ乗客
老婆
厚化粧の女
厚木の巡査
厚木の洋服屋
若い百姓女
愚連隊風の男
駅員
警視庁の巡査
拳銃を売る男
買う男A
買う男B
買う男C
公安官
黒ソフトの男
機関手
厚木の女
[c]キネマ旬報社